ドラゴンボール -地獄からの観戦者- フリーザ編 04

■Side:バーダック

 

 

 いつもの日課で訪れた水晶から映し出された光景を目にして、オレは自分が予想していた光景と違っていて柄にもなく取り乱しちまった。

 どうやらオレはテメーで思っていた以上に、カカロットに期待しちまっていたようだ。

 だから、水晶に映し出された光景が予知夢と違っていた事に想像以上のショックを受けちまった。

 

 だが、映ってねぇモンはしょうがねぇ。

 それにオレの中の何かが、訴えかけやがる……。

 カカロットは必ず現れると……。

 

 

 今、オレの目の前で、1人のサイヤ人がフリーザの野郎と戦っていやがる。

 こいつにそっくりなツラをオレは、いや、オレ達はよく知っている。

 そいつはかつて、オレ達サイヤ人の王として偉そうに踏ん反りがえっていた男だ。

 

 下級戦士のオレはツラを突き合わせた事は数えるくらいしかなかったが、あの偉そうなツラは覚えている。

 そして、目の前でフリーザと戦っている男はその男にとても良く似ていた。

 あのうっとおしいヒゲは無いが、それ以外はまさに瓜二つだ。

 

 恐らくは、あの男ベジータ王の息子のベジータ王子だろう。

 

 

「なぁ、あいつってベジータ王に似てないか?まさか、息子か?」

「じゃないかい?この前来たナッパやラディッツから王子は生きているって言ってたからね」

 

 

 どうやら周りのトーマやギネ達も状況は分かってはいないが、とりあえず落ち着いたのか、バーダックと同じ様に王子とフリーザの戦いを観戦していた。

 

 それにしても、王子のやつ明らかにサイヤ人の戦闘力のレベルを超えていやがる。

 オレは生きている頃からそこらのエリート戦士に負けているつもりはなかったが、こいつは明らかに昔フリーザに挑んでいた頃のオレより戦闘力が上だろう。

 

 その証拠にフリーザが付けていた、オレ等が生きていた頃よりはるかに性能が向上しているであろうスカウターが、あいつの戦闘力を測りきれずぶっ壊れやがった。

 それに何よりオレを一撃で沈めたフリーザの野郎相手に、ギリギリだがついていけてやがる。

 流石サイヤ人の王子ってか?やるじゃねぇか、王子の野郎!

 

 

「へー、王子のヤツかなりやるね。あのフリーザに何とか食い下がってるしさ」

「親父よりすでに強くなってんじゃねぇか?」

「だが、フリーザはまだまだ余力がありそうだな。このまますんなり行くとは思えんな」

 

 

 王子の戦いを見ていたセリパとパンブーキン、トーマの会話がバーダックにも聞こえていた。

 

 確かにな。この戦い間違いなくここから荒れるだろう。

 あのフリーザがそう簡単にやられるとは思えねぇ。

 

 だが、今の戦いを見ている限りじゃ、そこまで圧倒的な差がある様に見えねぇのも事実だ。

 この程度じゃ、他の2人が加われば間違いなくフリーザが不利だ。

 本当にこれがフリーザの実力なのか?

 

 バーダックがフリーザの実力に疑問を抱いたのとほぼ同じタイミングだった。

 戦い合っていたフリーザと王子が一旦距離をおいたのだ。

 そして、バーダックの抱いた疑問が間違っていなかった事を裏付けされる発言が飛び出したのは。

 

 

『変身しろフリーザ!』

 

 

 水晶から聞こえてきた王子の発言にオレ達は耳を疑った。

 いや、情けねぇ事だが信じたくなかっただけなのかもしれねぇ。

 

 

「へ、変身だと!?冗談だろ?」

「フリーザが変身するだなんて、聞いた事ないよ!?」

「王子のやつ何言ってやがんだ!?」

 

 

 どうやら仲間達もオレと同じ心境だった様だ。

 だが、そんなオレ達の思いはフリーザの言葉によってガラスのようにあっさりと砕け散った。

 

 

『いいだろう…………!!そこまで死にたいのなら見せてやる!!!』

 

 

 そこからのあいつの変化は正に劇的だった。

 戦闘服を吹っ飛ばしたかと思ったら、身体が震え上半身から急激に膨れ上がり小柄だったフリーザの身長が2mを超え体格も筋骨隆々になり、角も水牛のように伸び曲がった形状に変化していた。

 しかも、水晶ごしのオレですら変身前と変身後では明らかに発せられる威圧感のケタが増しているのが分かりやがる。

 

 

『へ……へへ…………気をつけろよ……。こうなってしまったら前ほどやさしくはないぞ……』

 

 

 変身したフリーザはんな事を言ってやがったが、この変身がハッタリじゃねぇ事は戦わなくても分かる。

 そんぐれぇ、別次元の存在になりやがった。

 

 だがオレ達もそして、戦っている王子達も知らない。

 この劇的な変化ですら、まだ地獄の入り口に片足を突っ込んだ程度だということに……。

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