ドラゴンボール -地獄からの観戦者- Story of Bardock Episode-03
「だらぁ!!!」
「はあっ!!!」
2人の男が同時に繰り出した拳は轟音をたて、ぶつかり合う。
その拳に込められた力が尋常じゃなかったからか、2人は同時に弾け飛んだ。
しかし、両者共しっかり着地を決め、目の前の相手をしっかり見据えていた。
片方は額に赤いバンダナを巻き、頬に十字の傷を持ちフリーザ軍の戦闘服を身にまとった男。
もう片方は、背中に剣を背負い黒いジャケットを着用した青年。
服装だけ見れば、まったく共通点が無い2人だが、この2人には明確な共通点があった。
それは、髪と瞳、そして2人から放出されているオーラの色だ。
逆立った金色の髪に、エメラルドにも似た輝きを持つ碧眼、そして見る者を圧倒する黄金のオーラ。
ここまで、特徴が一致すれば2人が無関係な存在だと思う者は、まずいないだろう。
そう、この2人は広い宇宙の中でも、戦闘民族と呼ばれる戦闘に特化した種族の血を引く者達だ。
そして、2人が現在、当たり前の様になっているこの姿こそ、彼らの一族に古くから伝わる伝説の戦士の姿なのだ。
しばらく相手の出方を伺っていた、2人だったが先に動いたのは青年の方だった。
青年は超スピードで男に向かい飛び出す。
「ちっ……」
舌打ちをした男は顔を顰めながら、こちらに向かってくる青年を見据える。
そして、青年を近付かせまいと瞬時に右手を相手に向ける。
「はあぁっ!!!だだだだだだ……!!!」
右手から掛け声共に、凄まじ数のエネルギー弾が連射される。
しかし、青年はその全ての数のエネルギー弾を紙一重で躱し、男との距離をどんどん詰めてくる。
そして、全てのエネルギー弾を掻い潜った青年は、ついに男の懐に入り込み強烈な右ストレートを男の左頬に叩き込む。
「はあっ!!!」
「ぐうっ……!!!」
右ストレートをモロにくらった男は、天性のタフさで何とか吹っ飛ばずに耐え切ったが、今の強烈なパンチで顔ごと上半身は仰け反ってしまった。
しかし、男はそこで怯むのではなく、今にも崩れ落ちそうな足に喝を入れ、お返しとばかりに自分の目の前にいるであろう青年に向かって拳を放つ。
「オラァ!!!」
その拳は、男の気迫の篭った素晴らしいパンチだった……。
当たれば、相手にもそこそこのダメージは与えられたかもしれない……。
しかし……、その拳は何者をも捉える事はなかった……。
「後ろですっ……!!!」
「なっ……!?」
拳を振り抜いた男の背後から凛とした声が響き、驚きの声を上げると同時に瞬時に後ろを振り返ろうとした瞬間、背中に衝撃が走った。
「がああっ……!!!!!」
衝撃が走ると同時に、今度こそ男の身体は吹っ飛んだ。
数十メートル程吹っ飛んだ男は、勢いよく地面に激突する。
激突した地面は、凄まじい轟音と共に陥没し砂煙が舞っていた……。
砂煙が治ると、陥没の中心地では男が何とか立ち上がろうとするが、力尽き仰向けに倒れこむ。
全身ボロボロで、息もかなり上がっているというのに、なんとか意識だけは繋ぎ止めた様だった……。
「はあっ……、はあっ……、はあっ……、はあっ……」
男が倒れ込んだのと同時に、金色の髪は黒髮へ、碧眼は黒眼へとその色を変えていた。
正確に言うなら、変わっていた髪と眼が元に戻ったと言う方が正解だろうか。
男の肺が、全力で酸素を求めていると、頭上からまたしても凛とした声が響いた。
「一旦休憩しましょう……。バーダックさん……」
倒れている男バーダックは、目だけ自分の頭上に立つ青年に向ける。
「はあっ……、はあっ……、そう……だな……。トランクス……。
ちっ……、同じ超サイヤ人なのに全然歯がたたねぇ……」
バーダックが見上げているトランクスは、多少服に埃などが付いているが、ほぼ無傷で息一つ切らさずそこに立っていた。
しかし、バーダックの言葉を受けたトランクスは静かに首を横に振る。
「いいえ、それを言うなら、バーダックさんの成長スピードの方が異常です。
タイムパトロールになり、トキトキ都に来て3年で戦闘力1万程から、超サイヤ人に覚醒し、ここまで成長しているんですから。
流石、悟空さんの父君ですね……」
「……何で、そこでカカロットの名前が出んだよ……」
トランクスの言葉に若干不機嫌そうに、バーダックが呟く。
その呟きを聞いたトランクスは苦笑を浮かべる。
「確かに、バーダックさんと悟空さんは戦闘スタイルは違います。
ですが……、どことなく似てるんですよ……。
勝負所というか、一瞬の隙を見逃さないと言うか……逆境の戦いの中で活路を見出し勝ちに繋げようとする所とか……、そういう所はそっくりだと思いますよ。
お2人は……」
「そう言うテメェは、全然親父に似てねぇよな……。
今だに信じられねぇぜ……、テメェがあのベジータ王子の息子だって……」
「あはは……、悟空さんにも大層驚かれましたよ……。
でも、オレは間違いなく誇り高いサイヤ人の王子、ベジータの息子ですよ」
ベジータの息子である事に誇りを持っているトランクスは、堂々とした笑みをバーダックに向ける。
そんな、トランクスに「ふんっ……」と鼻を鳴らしながらも、薄っすらと笑みを浮かべるバーダック。
「ふぅ、閻魔が最初にタイムパトロールの話を持って来た時は、眉唾物だったが、ここに来てよかったぜ……。
オレ1人だと修行しても、カカロットとの差はどうしたって埋まらなかっただろうからな……」
バーダックが何と無しに吐き出したその台詞に、トランクスは優しそうな笑みを浮かべ、目の前の男と初めて会った時のことを思い出していた……。
「あれから、約2年半か……」
そうして、トランクスは2年半前のあの日を振り返る……。
目の前の男を自身の弟子にした、あの日の事を……。