ドラゴンボール -地獄からの観戦者- Story of Bardock Episode-01

 ここは、閻魔界。

 見渡す限り黄色い雲に覆われた世界。

 その世界には1つの宮殿が立っていた。

 

 あらゆる者は死ぬと、まずここへ訪れる事になる。

 その宮殿の中で額に”閻”と書かれた二本の角の生えた帽子を被り、背広にネクタイの洋装をしている、身長10mはある巨体の男が彼の体格に合わせた、巨大な木製の机に座っていた。

 机の上には数多の書類や、台帳がのっかっており彼の仕事量がそれだけで伺える。

 

 

「天国行き……、地獄行き……、地獄行き……、天国行き……、地獄行き……」

 

 

 彼は、自身の前に次々と現れる魂の生前の行いを、手元の閻魔帳に基づいて瞬時に見極め、天国行きか地獄行きかの決定を次々と行っていく。

 この男こそ、この世とあの世の法則を司り、死者の魂に絶対の権力とあの世を司る力を持つ閻魔大王だ。

 閻魔大王が判決を下し、ハンコを押した死者の書類が彼の机の下に用意されている箱に次々と収まっていく。

 

 

「今日の大王様は少し厳しいオニ……」

 

 

 その書類を見て、箱の前で待機していた、普通の人間サイズの赤鬼が呟く。

 ちなみに彼はワイシャツにネクタイ、スラックスの洋装をしている。

 それは彼だけに限ったことではなく、閻魔大王の元で働く鬼達は、皆彼の様に人間サイズでワイシャツにネクタイ、スラックスの洋装という、まるで日本のサラリーマンみたいな格好をしているのだ。

 

 

「おや?書類が……」

 

 

 急に書類が上から降ってこなくなり、疑問に思った赤鬼だったが、その答えが上司の口らか齎される。

 

 

「なんだ?珍しい……、もう死者がいないではないか」

 

 

 閻魔大王が発した言葉に従い、赤鬼が閻魔大王の前に顔を向けると死者の魂が1つもなく、閑散としていた。

 この閻魔宮は第七宇宙と分類される宇宙の全ての死者の判決を行うため、普段は死者の魂で溢れかえっているのだが、ごく稀にこの様な日がある。

 

 

「ふむ、どうやら今日は宇宙が平和だと言うことだな。良いことだ」

 

 

 閻魔大王は嬉しそうに強面の顔に笑みを浮かべる。

 彼自身が言った様に、彼の前に魂が現れないと言う事は、宇宙の全ての命が健やかである証拠なのだ。

 

 

「そうですねオニ。しかし、ここ1年ほど前から徐々に死者の数が減っていましたが、最近は急激に減った様な気がしますオニ……」

 

 

 赤鬼は閻魔大王に同意しつつ、ここ最近の死者の数を思い出していた。

 

 

「孫悟空がナメック星でフリーザを下してから、フリーザ軍が機能しなくなったのが原因だろうな……。

 あの戦いで、フリーザ軍の幹部も根こそぎ死んでしまったからな……。

 まぁ、フリーザ自体はナメック星では何とか一命を取り留めたが、復活するまでに相当な時間を要したみたいだからな。

 その間は、いくら大王であるコルドがいたとはいえ、以前の様な大々的な行動は取れなかったのだろう……」

 

 

 閻魔大王は喋りながら、1年以上前自身が味わった衝撃を思い出していた。

 宇宙を荒らし回っていたフリーザ軍の戦士や、幹部達が次々と自分の前に魂となって現れたのだ。

 あの時は、久方振りに驚いたのを覚えている……。

 

 

「だが、決定的だったのは地球で未来からやって来た少年が、フリーザとコルドの両名を討った事だろうな……。

 それによって、宇宙を支配していた奴ら一族は、ほぼ滅んだ。

 残った残党達ではフリーザや幹部達が行なっていた様な大規模な破壊や、略奪は出来んだろう」

 

 

 フリーザとコルドが揃って閻魔宮にやってきた時は、あまりの事態に閻魔大王達は開いた口が塞がらないほど驚いた。

 しかも、この2人を殺したのが未来人等というおまけ付きだ。

 正直、頭が痛くなった……。

 

 人間が時を行き来するのは本来重罪だ……。

 もし、これがあのお方が目覚めている時に行われていたら、あの未来人の少年は間違いなく破壊されていただろう……。

 と、閻魔は内心で考えていた。

 

 今回はフリーザとコルドという宇宙の中でもトップクラスの罪人を倒してくれた褒美として、黙認したのだ……。

 それに、今罰しなくても、死後、彼が閻魔宮に訪れれば、どちらにしろその時に罰を与えねばならない事は確実なのだ。

 時の行き来というのは、それだけ重罪なのだ……。

 

 だから、何も早急に罰する必要は無いと判断したのだ。

 それに、件の少年は世界にとって、とても重大な使命を帯びている様な予感を閻魔大王は感じていた。

 

 フリーザを切っ掛けに、とある少年のことに思いを馳せていた閻魔大王だったが、その思考は下からの声で中断することになる。

 

 

「大王様、それでは今後は宇宙は平和になるんですか?オニ」

 

 

 赤鬼からの質問に、閻魔大王はしばし考えた後、残念そうに静かに首を振る。

 

 

「どうであろうな……。今はフリーザやコルドといった絶対的な支配者がいなくなり、落ち着いておるだけやもしれん……。

 奴らの椅子を狙って宇宙中の力ある悪党達が争い出せば、その時は多大な犠牲が出るやもしれん……。

 ワシとしては、このまま宇宙の平穏が少しでも長く続いて欲しいものだが……」

 

 

 閻魔大王は人間の人生とは比較にならない程、長い期間存在し続けて来た。

 そして、その役職柄、これまで宇宙中の様々な死者に直に合い裁いて来た。

 それは言い換えれば、この宇宙の歴史の経過を見て来たも同義なのだ。

 

 長い事宇宙の歩みを見て来た閻魔大王だらからこそ、実感を持って言えることがある。

 永遠に続く平穏など無いと……。

 フリーザ達が行って来た暴力による悪もあれば、精神的に苦痛を与える悪だってある。

 

 形は違えど、悪は必ず宇宙に存在する。

 そして、それを正す者が現れ平穏をもたらす。

 その繰り返しなのだ……。

 

 だが、閻魔大王はそれが悲しい事だとは思っても、悪い事だとは思っていない。

 何故ならそれは、この宇宙の者達が成長する為に必要な事だというのを理解しているからだ。

 今回のフリーザやコルドといった巨悪の存在も、今後の宇宙にとって必要な存在だったのだろう……。

 

 

「大王様〜!!!」

 

 

 思考の海に沈んでいた閻魔大王だったが、地獄へ通じる出口から息を切らせながら走って来た、メガネを掛けた小太りな青鬼の声で現実に引き戻された。

 

 

「なんだ?騒々しい」

「はぁ……、はぁ……、それが……、地獄の者が……、だ……大王様に、謁見を申し出ておりましてオニ……、はぁ……」

 

 

 閻魔大王が青鬼に視線を向けると、青鬼は息を切らせながら要件を告げる。

 内容を告げられた閻魔大王は、怪訝そうな表情を浮かべる。

 

 

「ふむ、地獄から謁見を申し出る者は偶におるが、何故お前は、そんなに慌てているのだ?」

 

 

 閻魔大王からしたら、言葉にした通り地獄からの謁見はそこまで珍しいことでは無い。

 だが、目の前の青鬼はわざわざ走ってやって来た。

 その意味が分からなかったのだ。

 

 

「そ、それが……謁見を申し出た者が、早く伝えないと自ら乗り込むぞ!と力ずくで突破しようとしましたので、走ってやって参りましたオニ……」

 

 

 閻魔大王は青鬼の言い分に頭が痛くなった。

 

 

「はぁ……、情けない……。

 貴様ら、それでも地獄を管理する鬼か!!!

 地獄の者の謁見はしかるべき手順を踏む様に、取り決めてあったでろうが!!!」

 

 

 閻魔大王の一喝で、青鬼と赤鬼は揃ってビクッ!!と身体を震わせる。

 そんな鬼達を尻目に閻魔大王は言葉を続ける。

 

 

「それで……、ワシに謁見を申し込んで来たのは何者だ?」

「そ、それが……、バーダック……という者でしてオニ……」

 

 

 ギロリと強面の顔を向けられた青鬼は、冷や汗を流し、たどたどしく答える。

 

 

「バーダック……、どこか覚えがある様な……」

「サイヤ人ですオニ……」

 

 

 謁見者の名前を聞き、記憶に引っ掛かりを覚えた閻魔大王は顎に手をやりながら思考するが、すぐに思い出す事は出来なかった。

 しかし、青鬼から齎された追加情報で、1人の男を思い出した。

 たった1人で宇宙の帝王フリーザに挑み、敗れ去った男を……。

 

 

「そうか……、あの時の……」

 

 

 宇宙の帝王フリーザに直接戦いを挑んだ者は意外と少ない……。

 大抵フリーザに行き着く前に、周りの兵士や幹部達に殺されてしまうからだ……。

 しかし、彼の男は男の一族が辿った結末を鑑みれば、仕方のない事なのかもしれないが、無謀にも直接フリーザに戦いを挑み、そして戦う機会を得た。

 

 結果だけ言えば、男は宇宙の帝王の前にあっさりと敗れ去った……。

 しかし、彼の男が命を懸けて繋いだ命と願いは、確実に次なる命へ受け継がれた……。

 そして、1年以上前に男の宿願はついに果たされる事となった……。

 

 男の息子の手によって……。

 

 

「このタイミングでやってくるとは、何かの縁か……」

 

 

 先ほどまで自身達がフリーザの事を話していた事を思い出した閻魔大王は、妙な縁を感じてならなかった……。

 それに、少なからず興味もあった。

 自身の弟弟子にも当たり、あのフリーザを倒した孫悟空の父親が自身に何の用があるのか……。

 

 

「ふむ、よかろう。本来は正式な手続きが必要だが、今日は見ての通り時間も空いておる。その者を連れて参れ」

「はっ、はいオニ!!」

 

 

 閻魔大王の言葉を受けた青鬼は急いで回れ右をした後、元来た道を駆けていった。

 その様子を見ていた赤鬼は、閻魔大王に声を掛ける。

 

 

「よろしかったのですか……?オニ」

「まぁ、たまにはよいじゃろう……」

 

 

 それから程なくして、青鬼と共に1人の男が閻魔大王の前に姿を現した。

 

 

「なるほど……、息子によく似ている……。

 いや、あいつが貴様に似たのか……。

 久しいな、バーダック」

 

 

 閻魔大王は自身の前に姿を現した男を見て、1年以上前にやってきた自身の弟弟子である孫悟空と目の前の男が確かな血縁者である事を改めて実感した。

 何故なら男と孫悟空は、殆ど瓜二つと言って良いほど似通っていたからだ。

 しかし、確かな違いも存在する。

 

 頬についた十字傷、目付き、額に巻いている赤いバンダナ、そして何より纏っている雰囲気が孫悟空のそれよりはるかに刺々しい。

 

 

「ほぅ……、あんたがあいつの事を知っていたとはな、閻魔大王……。

 そう言えば、ラディッツのバカと殺り合って、1度くたばったんだったか……、カカロットは……」

 

 

 閻魔大王の言葉に意外そうな表情を浮かべた後、すぐに原因に行き着いたバーダックは言葉を発する。

 バーダックの言葉に頷いた閻魔大王は、さっそく要件を聞くべき声を掛ける。

 

 

「それで、ワシに何の用だ?バーダック」

 

 

 閻魔大王に問われたバーダックは、一瞬話す事を躊躇する様な素振りを見せるが、意を決したのか口を開いた。

 

 

「実は……あんたに聞きてぇ事がある……。

 あんたは、オレが死ぬ前に持っていた力について知っているか?」

「お前が持っていた力……?……だと」

 

 

 バーダックが発した言葉の意味を上手く理解できなかったのか、閻魔大王は首を傾げる。

 

 

「ああ、オレは生前仲間達と共に、とある星を襲撃した。

 そこで、その星の生き残りに不意討ちを受け、その後から未来を垣間見る力を手に入れたんだ」

「ふむ……」

 

 

 バーダックの言葉を聞いた閻魔大王は、しばし顎に手を当て考えた後、自身の机の上に乗っている閻魔帳を捲りだす。

 いくつかのページをめくった後、目的のページを見つけたのか、手を止めそのページに目を通し始める。

 

 

「なるほど……、惑星カナッサを襲撃した時に受けた攻撃の事だな……。

 カナッサ星人の「幻の拳」によって、貴様は予知能力の力を得た訳じゃな?」

 

 

 閻魔帳から目を離した閻魔大王は、バーダックに視線を向ける。

 向けられた視線に頷く事で応えたバーダックは、更に言葉を続ける。

 

 

「オレはその力のお陰で、当時フリーザがオレ達サイヤ人に何をするつもりのか、部分的にだが知る事が出来た……。

 そして、まだ当時赤ん坊だったカカロットが、成長してフリーザの野郎と戦う運命にあるって事もな……。

 だから、オレはギネの反対を押し切り、カカロットを地球へ送ったんだ……。

 オレ自身は、その後、あんたも知っての通り惑星ベジータ共々フリーザの野郎の手によって消されちまった訳だがな……」

 

 

 言葉を切ったバーダックに、これまで黙って話に耳を傾けていた閻魔大王は、視線で先を促す。

 ”ここからが本題なのだろう?”と意味を込めて。

 視線の意味を正確に捉えた、バーダックは再度口を開く。

 

 

「死んで地獄に来てしばらく経った時に、ふと気付いた事なんだが……、死ぬ間際に散々オレに未来を見せ苦しめたあの力が、地獄に来てからは1度も発動していない事に……。

 まぁ、あの力自体元々オレ自身の力じゃねぇから、死んだ事ですっかり無くなっちまったモンだとオレは考えていた。

 実際、それから数十年1度も発動しなかったしな……」

 

 

 ここで言葉を区切ったバーダックは、静かに目を閉じる……。

 その様子は、何かを思い出そうとしている様だった……。

 しばらく、そうしていたバーダックだったが再び目を開けると口を開く。

 

 

「あんたも知ってるよな?1年前に起きたナメック星での戦いのことは……」

「ああ・・」

 

 

 バーダックの問いに、頷く閻魔大王。

 

 

「実は……、オレや地獄にいた他のサイヤ人達も、あの戦いを見ていたんだ……」

「なっ、何だと!?どうやってだ!?」

 

 

 閻魔大王はバーダックの言葉に驚き、立ち上がる。

 

 

「あんたも知ってんだろ?地獄にあるあのデケェ水晶の事はよ……」

 

 

 立ち上がった閻魔大王に冷静に言葉を告げるバーダック。

 だが、バーダックの言葉に今度は唖然とした表情を浮かべる閻魔大王。

 

 

「まさか……、あれが起動するとは……。

 いや……、周りにいたのが貴様らサイヤ人達なら、可能性はあるか……」

「?……何を言ってるのか、分からんが、話を続けていいか……?

 というより、これからが本題だ……」

「あ、ああ……、すまんかった……。続けてくれ」

 

 

 椅子に座りなおした閻魔大王を見て、話を再開するバーダック。

 

 

「どういう切っ掛けだったかまでは詳しく覚えちゃいねぇが……、あの戦いを見ている最中、数十年ぶりにオレに未来予知の力が発動しやがった……。

 いや、あれは……正確には未来予知……と言って良いのか、分からねぇんだが、少なくともあの瞬間……オレの意識は……、確かに地獄以外の場所に存在してやがった……」

「ふむ……、それで、貴様は何を見たんだ……?」 

「あー……」

 

 

 閻魔大王の言葉を受けたバーダックは、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる……。

 その表情を見て不思議そうに首を傾げる閻魔大王。

 

 

「ん?どうした?ここからが、本題なのだろう??」

「あー、まぁ……、そう……なんだけどよ…………」

「なんだ?やけに歯切れが悪いのう……」

 

 

 バーダックの反応に、本日初めてまともな会話をした閻魔大王からしてみても、現在の様子は目の前の男には似合わないと感じた。

 目の前の巨漢の男からの視線に観念したのか、バーダックは一つため息をつくと再び口を開く。

 

 

「オレがあの時見たのは……、何処か別の惑星で……2人の野郎が向き合ってやがったんだ……。

 1人は……、金髪で……翠色の瞳をした野郎……。

 もう1人は、どこかフリーザに似た感じの野郎……」

「ふむ……、フリーザに似た者という部分については、多少気にはなるが……、それ以外は特に気になる様な予知ではない気がするのう……?」

 

 

 閻魔大王の視線は、”何がそんなに気になっているのだ?”と告げていた。

 そんな閻魔大王の反応を予測していたのか、バーダックも同意する様に軽く頷いた後、再び言葉を発する。

 

 

「確かに、オレも最初この予知を見た時は、金髪の野郎よりもフリーザに似た野郎の方が気になった……。

 だが……、奴の……カカロットがフリーザとの戦いで見せたあの姿を見てから、オレはもう1人の金髪の野郎の事が頭から離れなくなった……」

「あの姿とは……、貴様等サイヤ人に伝わる伝説……”超サイヤ人”の事だな……?」

「ああ……」

 

 

 バーダックは地獄から水晶を通して、実際に孫悟空が伝説を体現してみせたのをその目で見ていた。

 また、閻魔大王はフリーザが死んで閻魔宮に来た際、彼の審判を行なった時、生前のフリーザの行いが記述された閻魔帳を読み、孫悟空がナメック星で”超サイヤ人”に目覚めたのを知ったのだった。

 そして、孫悟空以外にも超サイヤ人が存在している……、正確には今後現れる事も……。

 

 

「それで、お前は息子が超サイヤ人になった姿を見て、何故自分の予知に出てきた金髪の男が気になりだしたのだ……?」

 

 

 ここまでバーダックの話を聞いても、閻魔大王にはバーダックが言わんとしている事を正確に汲み取ることが未だ出来ていなかった。

 

 

「あんた、カカロットが超サイヤ人になった事は知っている様だが……、あいつの姿がどんな風に変化したのかは、知っているのか……?」

「いや、ワシはフリーザの裁判で閻魔帳に記述されていたモノに目を通しただけ……、まっ、まさか……!!」

 

 

 バーダックの問いに答えていた閻魔大王は、言葉を発している内に1つの推測が頭に浮かんだ。

 その瞬間、驚愕の表情を浮かべバーダックに向ける。

 バーダックも、閻魔大王の頭に浮かんだ推測を察したのか、同意する様に軽く頷く。

 

 

「ああ……、あんたが今頭に浮かんだ通りさ……、オレが予知で見た金髪の野郎……。

 そいつが、超サイヤ人へと変身したカカロットにそっくりだったのさ」

「むぅ……」

 

 

 バーダックが発した言葉に、閻魔大王は難しい顔を浮かべながら顎に手を当てる。

 

 

「つまり、貴様の見た予知と言うのは、息子がまたしてもフリーザに似た存在と戦う……というものだったのか?

 だが……、そんな予知だったら、お前がわざわざワシの所に相談になどやって来るとは思えんのだがのう……?」

 

 

 現状伝説の超戦士”超サイヤ人”に変身できるのは、カカロット事孫悟空だけだ。

 それを踏まえて、閻魔大王はバーダックの予知の内容に当たりをつけるが、目の前の男がそんな事の為にわざわざ自分の所にやって来るとは到底思えなかった……。

 きっと、この話には更なる続きがあるはずだと、閻魔大王は予想した。

 

 そして、その予想は正解だった。

 

 

「ああ、あんたの予想は正解だ……。

 もし、オレの予知に出てきた野郎がカカロットだったら、オレはわざわざあんたの所になんて来やしねぇ……。

 あの予知に出てきた、超サイヤ人は別のやつだ……」

「なるほど……。その口ぶりからすると、お前はその超サイヤ人の正体に心当たりがありそうだのう……?

 そして……、その人物があり得ない人物だったから、言葉にするのを躊躇っていた……、そういう事か?」

 

 

 閻魔大王が発した言葉にバーダックは、苦虫を噛みしめた様な表情を浮かべる。

 

 

「ちっ、白々しいぜ!その口ぶりからすると、あんたもその超サイヤ人の正体に大凡の予想はついてんだろう?」

「まぁな、さて……、それじゃあ答え合わせといこうじゃないか……、バーダック……。

 貴様の予知に出てきた超サイヤ人……、そいつは……、何者だ……?」

 

 

 閻魔大王の言葉を受け、バーダックは静かに目を瞑る。

 それはまるで、記憶の中にある予知を思い出している様だった……。

 数秒ほど目を瞑っていたバーダックだったが、静かに目を開け口を開く。

 

 

「そいつは……」

 

 

 この後の閻魔大王との会話によって、バーダックの運命は大きく変わることになる……。

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