ドラゴンボール -地獄からの観戦者- サイヤ人の悪魔編 3

 ナッパの言葉を受け、超サイヤ人を目指す事を本気で決意するラディッツ。

 

 

「そう言えば、ナッパよ……。 さっきオレ達って言ったか……?」

 

 

 先程ナッパが述べた言葉を思い出し、妙な引っ掛かりを覚えたラディッツが視線をナッパに向ける。

 そこには、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべたガチムチスキンヘッドの姿があった。

 その姿に嫌な予感を覚えるラディッツ。

 

 

「もしやと思うが……、お前も超サイヤ人を目指すとか言うのではなかろうな……?」

「あ? 何言ってんだ……? 当然だろう?」

 

 

 さも当然とばかり、逆に驚いた表情で返事を返すナッパに、いよいよ頭を抱えるラディッツ。

 だが、ここでラディッツにとって、予想外の言葉がナッパの口から飛び出す。

 

 

「まぁ、聞けや! オレとトレーニングする事は、お前にとっても悪い話じゃねぇ」

 

 

 頭を抱えていたラディッツだったが、その言葉に興味を惹かれたのか視線をナッパに向ける。

 

 

「お前、フリーザの野郎とベジータ達がナメック星で戦ってた時の事覚えているか……?」

「フリーザとの戦い……、しかもベジータ達だと……?

 それは、カカロットがやってくる前……、ベジータ、カカロットの息子、ナメック星人とハゲの地球人の4人でフリーザと戦っていた時の事を指しているのか……?」

「そうだ! オレはよ、あの戦いこそオレ達が強くなるヒントがあると思ってんだ!」

「? ……どういう事だ?」

 

 

 ナッパの言葉を聞いたラディッツは、思わず首を傾げる。

 そんなラディッツに、ニヤリと笑みを浮かべるナッパ。

 

 

「あの時、あいつ等4人とフリーザとの間には絶望的な戦闘力の差があった……。

 だが、あいつ等は何だかんだいって、あのフリーザの最終形態まで引っ張り出した……。

 こいつは、何でだと思う……?」

「? ……フリーザが戯にヤツ等に付き合ったからだろう……?」

「確かに、最終形態はそうだろうなぁ……。 だが、第3形態までだったらどうだ……?」

 

 

 ナッパの言葉を受け、ラディッツは再びあの時の戦いを脳内で思い出す。

 そして、改めて思い出すと、その戦いの凄まじさに戦慄する。

 正直、自分があの場にいて、あそこにいた面子の様に、最後まで戦う意志を持ち続けられたのか疑問に思うほどだった……。

 

 戦闘民族サイヤ人であるラディッツがそう思うくらい、フリーザとベジータ、悟飯、ピッコロ、クリリンとの間には絶望的な戦闘力の差があった。

 改めて振り返ると、よくあの戦力差で悟空がやってくるまで持ちこたえたものだと、ベジータ達の運の高さに驚愕する。

 だが、果たして本当に運だけで、あの宇宙の帝王相手に生き残るのことが出来るのだろうか……?

 

 何か彼等が生き残れる要因があったのではないだろうか……?

 ラディッツがそんな事を考えていると、ラディッツの脳裏に1人のナメック星人の姿が浮かび上がる。

 

 

「そういえば……、あの場には妙な力を持ったナメック星人のガキもいたんだったな……、あっ!」

 

 

 突如何かに気づいたラディッツは、勢いよくナッパの方に視線を向ける。

 するとそこにはニヤリと、人の悪そうな笑みを浮かべるナッパの姿があった。

 

 

「そうだ! あいつ等があの戦いをなんとか成立させた1番の要因は、サイヤ人の特性を活かした事にある!!! ……と、オレは考えている」

「瀕死の状態から復活すると、大きく力を増すというあれだな……」

 

 

 ナッパの言葉を受け、ラディッツは自身達一族が持つ特性を思い出す。

 そこで、再びナッパが口を開く。

 

 

「こう言っちゃぁなんだが、あの戦いの中で1番戦闘力が高くその力を発揮したのは、ナメック星人の野郎だ。

 だが、生き残れたという点だけに絞れば、ベジータとカカロットのガキの力が大きかったとオレは思っている……」

「そうだな……。 特にカカロットのガキの戦闘力の伸びは眼を見張るものがあったな……」

 

 

 ナッパの言葉に、ラディッツ自身も思い上がるフシがあったのか同意するように頷く。

 そんなラディッツを尻目にナッパは言葉を続ける。

 

 

「カカロットのガキも、そしてベジータもあの戦いで瀕死の重傷を負った……。

 その後、あのナメック星人のガキの妙な力により回復した……。

 そいつによって、あいつ等はサイヤ人の特性により大きな戦闘力の向上を果たした……」

「なるほどな……」

 

 

 これまでのナッパの言葉を受け、ラディッツはナッパが何を言いたいのか理解した。

 

 

「つまりお前は、オレ達もあの時の2人の様に瀕死……とまではいかなくとも、自身の限界までダメージを負った後、回復する事で大きな戦闘力の向上を果たそうというのだな……。

 確かに、それは1人では決して出来ないトレーニング方法だ……。

 だから、お前は自身と一緒にトレーニングする事が、オレのメリットになると、そう言いたいのだな……?」

「そういうこった!」

「まぁ、確かに2人でトレーニングすれば単純な戦闘力だけでなく、戦闘技術の向上も見込めるか……」

 

 

 自身の意図を正確に理解したラディッツに、ナッパはニヤリと力強い笑みを浮かべる。

 ナッパの話を聞いて、ラディッツも確かに短期間で強くなるには、その方法も有効だろう……。と考えた時点で、ふと重大な問題に気が付く。

 正直、その問題の解決方法を目の前の単細胞が持っているとは思わないが、一応聞いてみる事にした。

 

 

「なぁ、ナッパよ……。 確かにお前が言ったように2人でトレーニングをし、限界まで追い込むのはいいとして、どうやって短時間で身体を回復をさせるつもりなんだ……?

 まさか、自然に回復するのを待つつもりではないだろうな……?

 そんな事をしていては、回復に時間をとられ、まともなトレーニングなんて出来んぞ……?」

 

 

 何故ラディッツがこんな質問をしたのかには、ちゃんと理由があった。

 一応短時間で身体を回復させる方法はあるのだ。

 サイヤ人の集落にあるメディカルマシーンを使えば、それが可能となる。

 

 ちなみに、ナメック星で悟空がフリーザの宇宙船で使ったメディカルマシーンより新型なので、10分程でどんな大怪我も完治する事が出来るのだ。

 だが、昔と違って今は手合わせだろうと戦闘を行うには、ある程度の制限がある。

 特にネックとなっているのがメディカルマシーンの使用に、利用申請を行う必要がある事だ。

 

 申請が通らないと、メディカルマシーンを使う事は出来ない。

 これは、無闇矢鱈に戦闘を行わせない為の処置の1つでもあった。

 地獄には殺人を犯してはならないという法が存在する。

 

 これを犯すと、下手したら2度めの死……所謂存在の消滅に繋がりかねないのだ。

 それを少しでも回避する為に用いられたのが、メディカルマシーンの使用の制限だった。

 メディカルマシーンが使え無いという事は、戦った後のダメージを短期間で癒す事が出来無いという事だ。

 

 そうなると、日頃の刑罰や集落で決まっている畑仕事にも支障が出てしまい、重いペナルティーを受けてしまう事になる。

 それは、地獄のサイヤ人達にとって避けたい事態だ。

 そのような理由で、意外とこのメディカルマシーンの使用の制限のおかげで、地獄のサイヤ人同士の私闘は軽減された。

 

 その結果、同族や親兄弟だろうと平気で殺すと謂れたサイヤ人の集落でも、殺し自体は滅多に起きる事が無くなった。

 だが、地獄には、サイヤ人の様に戦闘欲求を持つ種族も多数存在する。

 それを解消する為に、闘技場という戦闘が行える施設が用意されている。

 

 月に数日その施設が開放され、同じ集落や他の集落の者と戦うことが出来る。

 そこで、日頃の鬱憤や戦闘欲求を解消する様にしているのだ。

 そんな日には、メディカルマシーンも自由に使える。

 

 しかし、今回のラディッツとナッパのトレーニングでは、メディカルマシーンの使用許可は残念だが降りないだろう。

 つまり、短時間での身体の回復が出来ないという事だ。

 ラディッツの発言はそれを懸念してのモノだった。

 

 だが、いい意味でラディッツの思惑は外れる事になる。

 何故ならラディッツが視線を向けると、再びニヤリと人の悪い笑みを浮かべたナッパの姿がそこにあったからだ。

 

 

「へっ! オレがそんな事考えてねぇと思ったのか? ちょっと、ついて来いよ!!」

 

 

 そう言って、ナッパは突如立ち上がると、勢いよく空へ飛び出す。

 突然飛び出したナッパに疑問を覚えながらも、ナッパを追ってラディッツも飛び出す。

 ナッパを追う形で地獄の空をしばらく飛翔していると、ラディッツの眼下に廃墟群が飛び込んできた。

 

 

(ここは……?)

 

 

 眼下に広がる廃墟群にラディッツが想いを馳せていると、先に飛んでいたナッパが高度を落とし始めた。

 ナッパは廃墟群の中でも1番高い建物の屋上へ降り立つ。

 そんなナッパの隣へ、ラディッツも同じ様に降り立つ。

 

 

「こっちだ! ついて来な!!」

 

 

 そう言うと、ナッパはズンズンと建物の中へ入っていく。

 そんなナッパの様子に溜息を吐きながらも、ラディッツもナッパの後を追って建物に足を踏み入れる。

 しばらく歩いていると、ラディッツは建物の中の雰囲気がどことなく自身が知っているものに似ている事に気がついた。

 

 

(何だここは……? 初めて来た場所のはずなのに、妙に懐かしい気分になる……。 ここは一体……?)

 

 

 自身の中に、浮かんだ考えに戸惑いながらもラディッツは足を進める。

 そんな時、突如先に歩いていたナッパの声が聞こえて来た。

 

 

「おっ! ここだ、ここだ!!」

 

 

 ラディッツがナッパに視線を向けると、閉じた扉の前で、立ち止まっているナッパの姿があった。

 

 

「ちょっと、待ってな!」

 

 

 そう言うと、ナッパは扉の横に備え付けられていたパネルを操作する。

 廃墟なのにエネルギーが通ってるのか?と一瞬考えたラディッツだったが、どうやらその心配は杞憂だった様だ。

 プシューという音共に、目の前の扉がスライドして開いたからだ。

 

 扉が開いた事で、2人は部屋の中に足を進める。

 

 

「こっ、これはっ!?」

 

 

 ラディッツは、部屋の中に鎮座する複数の巨大な機械を見て驚きの声を上げる。

 

 

「へっへへへ……。 こいつがありゃぁ、お前が言っていた問題も解決すんだろ?」

 

 

 そう言って、ポン!と機械に手を触れるナッパ。

 そう、今ナッパが触れているものこそ、ラディッツ達が強くなる為に必要とした機械。

 『メディカルマシーン』だった。

 

 

 「ど、どうしてメディカルマシーンがここに……?

  いや、それ以前にこの建物は何だっ!?」

 

 

 まさかの事態に、ラディッツは狼狽た態度で声を上げ、ここへ連れて来たナッパに視線を向ける。

 そんなラディッツの様子に、ナッパは得意げな笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「ここはなぁ……、フリーザ達が使用していたアジトさ……」

「フリーザだと!?」

 

 

 ナッパから飛び出した予想外の名前に、驚愕の表情を浮かべるラディッツ。

 

 

「お前も覚えてるだろ? 6年前にフリーザ達が何をやらかしたのか……」

「ああ……。 その結果、あいつらは今も自由を奪われ拘束されているのだったか……」

「そうだ……。 そして、ここはあいつ等が使っていたアジトって訳だ……」

 

 

 6年程前、地獄はかつて無い危機的状況に陥ろうとしていた。

 宇宙の帝王フリーザと、最強の人造人間セルが手を組みクーデターを企てたのだ。

 フリーザは、地獄に落ちた事で生前従えていた自身の軍を無くしてしまった。

 

 だが、そこはやはり宇宙の帝王と呼ばれた存在。

 フリーザは僅か数年で、あらゆる分野の優秀な人材を地獄中から集め、生前従えていたフリーザ軍に勝るとも劣らない第2のフリーザ軍を作り上げたのだ。

 そんな、フリーザ達が本拠地として使用していたのが、今ラディッツ達がいる施設だった。

 

 フリーザ達のクーデターは、あの世からやって来た孫悟空やパイクーハンの活躍もあって、大きな被害を出す事なく終結した。

 軍の指導者であるフリーザや、上層部であるギニュー特戦隊やコルド大王等もまとめて捕まった事で、第2のフリーザ軍は自然消滅してしまった。

 その結果、この建物はほとんど、もぬけの殻になってしまった。

 

 フリーザがクーデターの為に用意した、物資などは残った残党達がそれぞれ持ち逃げしてしまったので、ほとんど残っていない。

 だが、施設自体はほぼ手付かずにそのまま残された。

 これは、もしフリーザ達が何かの拍子に解き放たれた時、かつての自身のアジトを好き放題使用しているのがバレて、報復されるのを残党達が恐れたからだ。

 

 その放置されたフリーザ軍のアジトを1年前たまたまナッパが発見したのだった。

 正直、見た目はほぼ廃墟だったので、建物に入ったのは単なる気まぐれだった。

 建物の中は電気など付いておらず、時間帯的に昼間だというのに、光が一切差し込まないので真っ暗だった。

 

 適当に施設内を歩いていると、たまたまコントロールルームに出たので、ナッパはダメ元でキーボードに触れる。

 正直、電気がついていない時点で、この施設はエネルギーが供給されておらず、システム自体は死んでいるだろうとナッパは考えていた。

 だが、ナッパがキーボードに触れ、適当にキーを押すと、目の前のモニターが輝く。

 

 まさかシステムが生きているとは思っていなかったナッパは、思わず「うおっ!?」と間抜けな声を上げてしまう。

 その場には誰もいないが、変な声を上げた事がよっぽど恥ずかしかったのか、思わず赤面してキョロキョロ周りを見渡すナッパ。

 改めて誰もいない事にほっとしたのか、再び目の前のモニターに視線を移すナッパ。

 

 最初こそ、適当にシステムを触っていたナッパだったが、触っている内に自身がかつて触った事があるシステムに似ている事に気がつく。

 だが、これは当然といえば当然だろう。

 この施設自体、フリーザ軍が使用する為に作られた施設だ。

 

 ナッパはフリーザ軍に長年所属していた事もあり、フリーザ軍が使っているシステムに馴染みがあった。

 多少アップデートこそされているが、システムの根本的な部分は変わっていなかったのだ。

 ナッパの様な筋肉達磨が、システムを触れる事に違和感を覚える者も多いだろうが、よく考えて欲しい。

 

 この男も軍に所属して任務を与えられ、任務内容を確認して、宇宙船を操作し、任務をこなし、任務完了の報告等をして来た筈なのだ。

 当然、組織に属する者として最低限、組織が使用するシステムの扱い程度は心得ていた。

 自分がかつて触れた事があるシステムに似ている事に気がついてからのナッパの作業は迅速だった。

 

 このコントロールルームの端末の権限で見れるデータを片っ端から開いていた。

 その結果、この施設がフリーザ達が使用していたアジトだという事を知る事が出来た。

 さらに、このアジトにどんな施設や設備があるのか等も大まかにだが、把握する事が出来たのだ。

 

 その際に分かった事だが、このアジトは建物自体にヒビが入ったりして廃墟同然だったが、施設の機能はまったく問題なく稼働できる様なのだ。

 そもそも、この施設は半永久的にエネルギーを生成する装置が用意されているので、よほどの事がない限り、施設が機能不全に陥る事はない。

 現在電気等が付いてい無いのは、長年施設が使用され無かった事で、システムが自動で省エネモードに切り替えたせいだった。

 

 見た目がボロボロになっていながらも、施設の運用にまったく支障をきたさないところは、流石宇宙の帝王フリーザが集めた優秀な者達が作ったアジトだと言えるだろう。

 

 ちなみに余談だが、ナッパやラディッツはその宇宙の帝王フリーザが、お花畑で蓑虫みたいに拘束され、妖精達のパレードを見せられる様な、屈辱的な目に合っている事など毛ほども知らなかった……。

 実際、根っからの悪人であるフリーザからしてみればリアルに地獄でしかないと思う……。

 

 

「まぁ、んな経緯でオレはこの施設に、メディカルマシーンがある事を知ったって訳だ……」

「なるほどな……」

 

 

 ナッパからこの施設や、メディカルマシーンを知るに至った経緯を聞いたラディッツは納得した様な表情を浮かべる。

 そして、自身が何故ここを懐かしいと感じたのか、その理由も同時に理解した。

 生前のラディッツは、惑星ベジータで過ごした時間よりも、フリーザ軍で過ごした時間の方が遥かに長かった。

 

 そんなラディッツからしてみれば、この施設は自身が生前過ごした場所を思い起こすには十分だったのだ。

 思わぬ形で郷愁の念に駆られる事になったラディッツだったが、ここに来た目的を思い出し、視線をメディカルマシーンに向ける。

 

 

「こいつがあれば、ダメージを気にせず限界まで追い込む事が出来るな……」

「ああ……」

 

 

 真剣な表情でポツリと呟いたラディッツの言葉に、同じく真剣な表情で頷くナッパ。

 しかし、次の瞬間ナッパは得意げな笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「メディカルマシーンさえ自由に使えりゃぁ、オレ達もサイヤ人の特性を活かしたトレーニングで戦闘力の強化が可能となるはずだ!!!

 戦闘力を上げることさえ出来りゃぁ、超サイヤ人になんのも夢じゃねぇぜ!!!」

 

 

 メディカルマシーンが自らの手柄で自由に使える様になった事で、得意げな表情で能天気な発言をするナッパ。

 しかし、そんなナッパに冷水を浴びせる様に、ポツリとラディッツが呟く。

 

 

「いや、恐らくそれだけじゃ足らんだろう……」

「あん?」

 

 

 水を刺された事が不満なナッパは、不機嫌を隠しもせず、ギロリとラディッツに視線を向ける。

 だが、視線を受けたラディッツは、浮かれた考えを正す様に真剣な表情でナッパを見つめる。

 ラディッツの醸し出す雰囲気に、ナッパの表情も思わず真剣なものへ変わる。

 

 そんなナッパの変化に、彼が話を聞ける状態になったと判断したラディッツは再び口を開く。

 

 

「確かに、オレ達には戦闘力の強化が必要だ……。

 だが、それだけじゃあカカロットや親父……、そしてベジータの様にはなれんだろう……」

「ベジータ?」

 

 

 突如飛び出したベジータの名前に、ナッパは不思議そうに首を傾げる。

 

 

「カカロットが言っていたが、ベジータも超サイヤ人への覚醒を果たしたらしい。

 それだけじゃない、カカロットのガキもな……」

「何だと!?」

 

 

 ラディッツから齎された爆弾発言に、ナッパの表情が驚愕に染まる。

 そんなナッパの表情を見て、ラディッツは苦笑いを浮かべる。

 

 

「流石に驚くよな……。

 だが、だからこそオレは親父やカカロットが言っていた事に信憑性があると思った訳だがな……」

「あん?」

 

 

 ラディッツの発言の意図が掴めなかったのか、首を傾げるナッパ。

 そんなナッパへ呆れた視線を向けるラディッツ。

 

 

「さっき言っただろう?

 超サイヤ人はサイヤ人であれば切っ掛けがあれば誰でもなれるってヤツだ」

「ああ! そういえばそんなこと言ってやがったな……」

「流石に短期間に超サイヤ人へと覚醒を果たした奴がこれだけ多数現れれば、親父達の言葉もあながち間違っていないのかもなと思ったのだ……」

「なるほどな……」

 

 

 確かに僅か数年で複数人の超サイヤ人が誕生しているのであれば、伝説の千年に1人の戦士とは大袈裟だったのかもしれない。

 ラディッツ同様ナッパもそう考えてしまった。

 

 

「にしても……、ベジータの野郎まで超サイヤ人へなってやがったのか……」

「まぁ、あいつもカカロットが超サイヤ人へ覚醒した事は知っていたからな、そこを目指すのは当然ではないか?

 下級戦士が伝説の戦士へ目覚めて、王子である自分が遅れをとっているなど、あいつのプライドが許さんだろ……」

「確かにな……」

 

 

 自身を殺したベジータが超サイヤ人へ目覚めた事に、少し苛立ちを覚えたナッパ。

 だが、ラディッツの言葉を聴き、確かにベジータだったらそうするかもなぁ……と長年仕えてきた王子の性格を知るナッパは、その姿を容易に想像できた。

 

 

「まぁ、今はベジータの事なんてどうでもいい……。

 それで、戦闘力の強化だけだと足りないってのはどういう事だよ……?」

 

 

 ベジータの事は頭の外へ追いやり、先程のラディッツの言葉を思い出したナッパは改めて問いかける。

 そんなナッパへラディッツは、自らの考えを打ち明ける。

 その表情には、どこか覚悟が宿っていた……。

 

 

「戦闘力の強化以外に、今のオレ達に必要なのは、戦闘力のコントロールだ!!!」

 

 

 意を決して、口を開いたラディッツ……。

 果たして、ラディッツが言う戦闘力のコントロールとは、2人に何を齎すのか……。

 

 続きは、次回……。

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