ドラゴンボール -地獄からの観戦者- フリーザ編 15

■Side:バーダック

 

 

 一瞬で距離を詰めたフリーザの拳が、深々とカカロットのボディに突き刺さる。

 あまりの威力にカカロットの身体が、無意識に前かがみになる。

 そのカカロットの頭を両手で掴んだフリーザは、追撃とばかりに顔面に強烈な膝蹴りを叩き込む。

 

 膝蹴りにより、完全に体勢を崩したカカロットに、フリーザによる強力な拳打が無数叩き込まれる。

 フルパワーってヤツは伊達じゃないのか、1発1発の攻撃力がこれまでとは雲泥の差だった。

 その証拠に、先程まではフリーザの攻撃など殆ど効いていなかったカカロットに、確かにダメージを与えてやがる。

 

 

『ぐ……、ぐふっ…………』

 

 

 拳打から解放されたカカロットは、ダメージゆえか前かがみの状態で苦悶の声を上げている。

 そんなカカロットをフリーザの野郎は、ムカつく笑みを浮かべながら得意げな顔で見てやがる。

 本当にムカつく野郎だ……。

 

 

『はあっ……はあっ……くっくっく…………、どうだ?

 今のはこれから見せる最終攻撃の為の準備運動だぞ』

 

 

 ……随分息が上がってやがるな?

 やっぱり、カカロットが睨んだ通りフルパワーってのは、相当無理している様だな……。

 

 とは言え……、そのカカロットがフリーザの相手にならねぇと話になんねぇんだがな……。

 

 

『……だろうな…………。

 そんな程度じゃガッカリするところだ……』

『……!く…………!』

 

 

 って、どうやら心配いらねぇみたいだな……。

 しかも、フリーザの野郎カカロットの言葉を聞いて、相当頭にきたみてぇだな。

 顔を歪ませて、かなりいいツラしてやがるぜ。

 

 

『貴様が死ぬ前に、一言褒めておいてやろう……。

 見事だ……。素晴らしい強さだったぞ、超サイヤ人……!

 確かに宇宙一だ…………。このフリーザさえいなければな!』

 

 

 ちっ!かなり頭に来てやがんだろうが……、感情を上手くコントロールしやがったか……。

 今の状況は、あの野郎にとっても結構マズいってだろうからな……。

 下手を打てない場面だと理解しているからこそ、怒りを押さえ込み冷静になりやがった……。

 

 

『この星の寿命も近い。

 精々もって、あと2〜3分になってしまったかな?

 焦るだろ?え?超サイヤ人……』

 

 

 しかも、この場面に来て挑発による心理戦をしかけ、カカロットの精神に揺さぶりをかけ焦せらせるつもりか。

 だがな、フリーザ……そいつは無意味だぜ……。

 なんせ、カカロットの野郎はテメェをぶっ倒す事しか考えてねぇんだからな。

 

 

 バーダックの考え通り、フリーザから挑発の言葉を浴びせられたというのに、悟空は不敵の笑みを浮かべ冷静そのものだった。

 そのあまりの冷静な様子に、怪訝そうな表情を浮かべるフリーザ。

 そして、1つの見当違いな考えに行き当たる。

 

 

『そうか、時間稼ぎか……。

 あのガキたちがこの星を脱出する為の……。

 くっくっく……、まぁいいさ、逃したところで次のターゲットを地球にする。

 死ぬのが僅かに伸びるだけだ……』

 

 

 その見当違いのフリーザの発言に、冷ややかな笑みを浮かべる悟空。

 

 

『時間稼ぎだと?そんな必要はない。

 貴様はここで死ぬ。これから、ここで……』

『くっくくくく……』

 

 

 悟空の台詞を聞いたフリーザは、感情を押し込めた様に俯き笑い声を上げる。

 しかし、次の瞬間、勢いよく顔を上げたフリーザの表情は憤怒によって歪んでいた。

 

 

『でかい口をきくのもそこまでだ!!!!

 今すぐ黙らせてやるぞ!!!!』

 

 

 怒声をあげるフリーザに対して、冷静に構えを取る事で応える悟空。

 そんな悟空の様子に、さらに怒りのボルテージを上げるフリーザ。

 

 

『ばあーーーーーっ!!!!!』

 

 

 声を上げながら、超スピードで悟空に迫るフリーザ。

 そのフリーザをカウンターで迎え打とうと、右拳を構える悟空。

 しかし、悟空が右拳を振り抜くよりも早く、フリーザは悟空の目の前で急上昇する。

 

 悟空が視線を上げた時には、両手を構えたフリーザの姿がそこにはあった。

 次の瞬間、悟空に強力な衝撃が上空から襲いかかる。

 フリーザが悟空に向けて気合い砲を叩き込んだのだ。

 

 

『ぐっ!!!』

 

 

 気合い砲による衝撃で、一瞬だけ動きを封じられた悟空。

 そのスキを逃すまいと、悟空の背後に瞬時に現れたフリーザは強烈な左ストレートを繰り出す。

 しかし、悟空は驚異的な反応速度で僅かに身体を捻り、その攻撃を回避する。

 

 さらに悟空は回避と同時に、フリーザが繰り出した左腕を自分の左腕でホールドする。

 そして、背後にいるフリーザの顔面に自分の首を勢いよく後に倒す事で、頭突きを喰らわせる。

 

 

『がっ……!!!』

 

 

 痛みで一瞬気が緩んだフリーザに追撃をかける様に、悟空はホールドしていたフリーザの左腕を両手で掴む。

 そして、ジャイアントスイングの要領で高速で振り回し、上空へ投げ捨てる。

 

 悟空に投げ捨てられたフリーザは、猛スピードで上空へとその身を上昇させていく。

 自分の身体のコントロールだけでは、勢いを殺しきれないと判断したフリーザはエネルギー波を放ち、勢いを殺す。

 やっとの思いで勢いを殺したフリーザは、憎々しげに下にいる悟空に視線を向ける。

 

 そこには、右腰だめに両手を添え、自身へ鋭い視線を向ける悟空がいた。

 

 その構えを見たフリーザは、悟空の次なる攻撃を予測し自身も次の攻撃の準備に移る。

 

 

『うおおおおお……!!!』

 

 

 咆哮とともに膨大な気がフリーザから放出される。

 それは次第にフリーザを中心にエネルギーの膜の様に変わり、バリヤみたいに円状の形へ姿を変える。

 その形状には外敵からの、いかなる攻撃をも通さない気概が伺えた。

 

 バリアを展開したフリーザは、そのまま悟空へ向け猛スピードで突撃する。

 そして、それを待っていた様に悟空は右腰だめに添えていた両手を前に突き出す。

 

 

『くたばれフリーザーーーーーッ!!!!!』

 

 

 叫びと共に悟空の両手から、極大のかめはめ波が放出される。

 その数秒後、バリアを纏ったフリーザと悟空のかめはめ波はナメック星に轟音を轟かせ激突した。

 

 2人の全力のパワーを込めたやり取りは、ただでさえボロボロなナメック星に更にダメージを与える程、壮絶なものだった。

 

 

『ぐあああああ…………!!!』

『うおおおおお…………!!!』

 

 

 互いに全力の力を振り絞る悟空とフリーザ。

 正に2人の攻防は一進一退だった。

 

 

「やれぇーーー!!!カカロット!!!」

「今度こそ、フリーザを沈めちまいな!!!」

 

 

 悟空とフリーザの戦いを見ていた地獄のサイヤ人達も、この攻防には自然と血を騒がせていた。

 

 

「ん?なんだ……?」

 

 

 他のサイヤ人達同様戦いを見ていたバーダックは、何故だか急に嫌な予感がしたのだ。

 そして、その予感は的中することになる。

 必死に悟空のかめはめ波を突破しようと試みていたフリーザの表情が、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべる。

 

 次の瞬間、バリアを展開していたフリーザが悟空のかめはめ波の射線上から弾ける様に離脱したのだ。

 そして、そのままかめはめ波を放ち続けている悟空の視界の外から、超スピードで突っ込む。

 

 反応が遅れた悟空は、攻撃中だったという事もありフリーザの攻撃をまともに受け、吹っ飛んでしまう。

 しかも、かなりの威力だったらしく勢いを殺しきる事も出来ず海の中を猛スピードで落ちていく。

 

 

『どうだっ!!!ざまーみろ!!!

 貴様ごときが、このフリーザに勝てるわけがなかったんだ!!!!

 はっはーーーーっ!!!』

 

 

 吹っ飛んだ悟空を見て、息を荒げながらも勝利の笑みを浮かべるフリーザ。

 

 

 

「カカロットーーーーーッ!!!」

 

 

 ギネが心配そうな叫び声を上げるが、悟空は姿を現さない。

 

 

「おいおい……、流石にマズくねぇか……?」

「ああ……、今のは相当な威力があったぜ……」

 

 

 パンブーキンとトーマがフリーザの攻撃力に、驚愕の反応を示す。

 しかし、そんな中1人だけ別の事に気が付いた存在がいた。

 

 

「あれ……?ねぇ、なんだかナメック星の空が暗くなってない……?」

 

 

 最初に異状に気付いたのはセリパだった。

 

 

「あっ、ほんとだ……」

「星が消滅する前だから、何らかの異状が起きてんじゃねぇのか?」

 

 

 セリパの発言により、いつの間にかナメック星の空が、夜みたいに真っ暗になっている事に気が付いたサイヤ人達。

 それだけ、悟空とフリーザの戦いに全員が注力していたという事だろう。

 

 そして、地獄のサイヤ人達に遅れてこの存在も、異状に気付いた。

 

 

『空が……、なんだ……!?

 星が爆発する前の異状か……!!』

 

 

 水晶の中のフリーザも、周りを見る余裕が出来たからか、漸くナメック星の異状に気が付いた。

 しばらくナメック星の様子を観察する様に見回すフリーザ。

 

 

『ハア……ハア……、どうやらすぐにこの星から離れた方が良さそうだ。

 爆発に巻き込まれれば、更に激しく体力を失ってしまう……』

 

 

 これ以上ナメック星に止まるのはマズイと判断したフリーザは、急ぎ離脱しようとしたその瞬間、フリーザの両目はその存在を確かに捉えてしまった。

 信じられないという表情を浮かべたフリーザだったが、残念な事にそれは見間違いでは無かった。

 

 フリーザの視線の先、海から黄金のオーラを纏った男がゆっくりと浮かび上がって来た。

 空中で静止したしたその男は、多少息を切らしているものの五体満足でそこに存在していた。

 両眼から覗くその鋭い瞳は、まだ決着は付いていないと言外に語っていた。

 

 

『…………この、しつこいくたばりぞこないめ……』

 

 

 その姿を見たフリーザの顔に、苛立ちの感情が宿る。

 

 

『いいだろう!!今度は木っ端微塵にしてやる、あの地球人のように!!!!』

 

 

 憎々しげにその男を睨みつけたフリーザは、その苛立ちを爆発させる。

 しかし、その台詞はこの男にとって……、孫悟空にとって正に逆鱗に触れる行為だった……。

 

 

『あの地球人の様に?……クリリンのことか……クリリンのことかーーーーーっ!!!!!』

 

 

 フリーザの台詞を聞いた悟空は、怒りを爆発させる様に全身から黄金色の凄まじい量の気を放出する。

 抑えきれない怒りを含んだ瞳でフリーザを睨みつけていた悟空だったが、ふと何かに気づいた様に視線をあさっての方向に向け、口を開く。

 

 

『変えてくれ、その願い!!

 フリーザとこのオレを除いた者達すべてを!……に』

「なんだ??何言ってんだ!?」

「カカロットの野郎、また誰かと話してやがんのか??」

 

 

 急に意味不明な言葉を発した悟空に、地獄のサイヤ人達はまたしても困惑の表情を浮かべる。

 しかし、瞬時に先ほど聞こえた姿なき声と再度話しているのかと予想するが、先程と違って今はその姿なき声は聞こえなかった。

 

 

「あぁ??でも、さっきみたいに変な声が聞こえねぇ……あ?」

 

 

 ナッパが姿なき声が聞こえないと言葉にした瞬間だった……。

 先程同様またしても水晶は、悟空以外の声を拾い出した。

 

 

(き……聞いておったのか悟空……!気持ちは分かるが……、こ、ここはひとまず……)

『今ここで決着を着けなければ、オレは一生あんたを恨む……!』

 

 

 だが、ここでも地獄のサイヤ人達を無視して悟空と界王の会話は続く。

 さらに、水晶は先程と違って界王以外の声をも拾い始めた。

 

 

(デンデよ、最長老だ。

 お前の近くで神龍が最後の願いを待っているはずだ。

 すぐに行って、その3つ目の願いを言って欲しい。

 3つ目の願いは……、『フリーザと孫悟空というサイヤ人を除いた全ての者を、地球に移動させて欲しい』だ)

「今度は違うヤツの声まで、聞こえ出したぞ……」

「てか、トーマこれ何の話ししてんの……?」

 

 

 最長老の声に驚きの声を上げるパンブーキン。

 だが、それ以上に話の内容が気になって仕方ないセリパは、自分たちの仲間の中でバーダックと同じくらい頭の回転が早い男に話をふる。

 

 

「あー、推測でもいいか?

 恐らくだが、ナメック星には何らかの方法で、自分の願望を叶えられる道具でもあるんじゃないのか??」

「ドラゴンボールか!?」

 

 

 トーマの推測に喰いついたのはナッパだった。

 

 

「ドラゴンボール?何だそれは?」

 

 

 逆にトーマから質問されたナッパは、ニヤリと得意げな笑みを浮かべる。

 

 

「なんだ、知らねぇのか!!

 ドラゴンボールってのは、頼めばどんな望みだろうと叶えてくれる代物だ!!

 死人を生き返らせる事だって、可能らしいぜ!!!」

「なるほどな……」

 

 

 ナッパの言葉を聞いて、1人納得顔のトーマ。

 

 

「なに、1人分かった様なツラしてんだよ!!!」

「そうだよ!!あたし達にも教えなよ!!!」

 

 

 そんなトーマに、パンブーキンとセリパが声を上げる。

 2人に呆れた様な視線を向けるトーマ。

 

 

「はぁ、お前等本当にバカだな……。

 いいか、この星にはカカロットのガキや見えてねぇだけで、他にも生き残ってるヤツがいるかもしれねぇ……。

 さっきの声の主とかな……。

 だが、この星が消し飛ぶまで残り3分ぐらいしかねぇ……。

 そんな短時間で、この星にいる全員が脱出出来ると思うか??

 普通に考えて不可能だろ……、そこで、さっきナッパが言っていたドラゴンボールってヤツを使うんだろうぜ……」

「全員を地球へ移動させる為にかい?」

「そんな事出来んのかよ??結構な広さっぽいぜ、この星……」

 

 

 トーマの推測に信じられないって顔を浮かべるセリパとパンブーキン。

 ドラゴンボールの力を知らなかったら、この反応も仕方のない事だろう。

 

 

「出来るんじゃねぇか?さっき話していたヤツ……最長老とか言ったか、名前からしておそらくこの星の権力者だろう。

 そいつが指示を出したって事は、不可能じゃねぇんだろう。

 それに、もしナッパが言っていた様に、人を生き返らせる事が可能なほどの性能を持っているのだとしたら、ナメック星から地球へ人を送るぐらい出来ても不思議じゃねぇしな……」

 

 

 言葉を終えたトーマに未だ信じられないって表情を浮かべている2人だったが、反論できる材料もないので口を閉ざした。

 そんな時、横から第三者の声が聞こえてきた。

 

 

「でも、カカロットとフリーザはその移動には含まれてないんだろ??」

 

 

 トーマが声の主に視線を向けると、不安そうな表情を浮かべたギネが立っていた。

 

 

「ああ、会話の内容から察するに、姿の見えねぇ声だけの2人はフリーザはともかく、カカロットも地球へ移動させるつもりだったみてぇだな。

 だが、あいつ自身がそれを拒否しやがった。

 カカロットとしては、なんとしてもここでフリーザと決着を着けたいんだろうよ……」

「そう……だよね……」

 

 

 トーマの言葉を聞いて、さらに不安の度合いが増した表情を浮かべるギネ。

 

 

「心配すんな、ギネ!あいつは必ず勝つ!!」

 

 

 声の方にギネが視線を向けると、腕を組んだバーダックが水晶を見上げていた。

 その表情には悟空の勝利を微塵も疑っていない様だった。

 

 その姿を見て、ギネも覚悟を決める。

 

 

「必ず行きて帰るんだよ……、カカロット……。

 あたしもここから最後まで見届けるから……」

 

 

 地獄のサイヤ人達がナメック星の会話の推測等を行なっている間にも、悟空達の会話は続く。

 

 

(わ……わかった……。

 ……もう、何も言わん…………お前がそれほど望むなら……。

 必ず生きて帰るんだぞ……悟空……)

『ああ、しかし随分知恵を絞ったな、界王様……』

 

 

 界王との会話でフリーザの言葉で爆発した悟空の怒りも幾分か落ち着き、これから戦いを再開させようとしたその瞬間だった。

 フリーザが何かに気づき、驚愕の表情を浮かべたのを悟空は見逃さなかった。

 

 

『!?……あれは…………、ド……ドラゴンボール…………』

 

 

 驚愕のあまりつい声に出してしまったフリーザ。

 それにより、悟空も何故フリーザが驚愕の表情を浮かべていたのかを理解する。

 数秒程、2人は揃ってナメック星の神龍ポルンガに目を奪われていた。

 

 しかし、そんな時間は長く続くはずもなく……。

 

 先に動き出したのは、フリーザだった。

 超スピードでポルンガへ向けて飛び出す。

 

 

『くっ!!!!』

 

 

 飛びだしたフリーザに気付いた悟空も、フリーザが何をしようとしているのかに勘付き、後を追うように超スピードで飛び出す。

 フリーザがあと僅かでポルンガに接触出来る距離まで近づいた瞬間、悟空が目の前に姿を現しフリーザを殴り飛ばす。

 

 

『邪魔をするなぁーーーー!!!』

 

 

 いきなり目の前に現れ、悟空に殴り飛ばされたフリーザは、怒声と共に右ストレートを繰り出す。

 しかし、それにカウンターを合わせ逆に吹っ飛ばす悟空。

 だが、フリーザも瞬時に体勢を整え悟空に突撃してくる

 

 突撃してくるフリーザに悟空の方からも距離を詰め、近距離で打ち合いに突入した。

 双方ともここが正念場とばかりに、全力で拳を振るう。

 その威力にナメック星の空に、いくつもの衝撃が走る。

 

 打ち合っていた悟空の攻撃を躱しドロップキックをボディに叩き込んだフリーザ。

 そして、その勢いを活かしポルンガに向け飛び立とうとした瞬間、あり得ない声が響き渡った。

 

 

『フリーザーーーーーーッ!!!』

 

 

 声の発生源に2人が視線を向けると、こちらに物凄いスピードで1人の男が飛んできた。

 その姿を捉えた瞬間、悟空は嬉しそうな笑みを浮かべたが、フリーザは驚愕の表情を浮かべる。

 

 

『ベジータ!!!』

「王子だと……!?!?」

「何で、死んだ王子が生き返ってんのさ???どうなってんだい……!?」

 

 

 悟空が名前を呼ぶと、ベジータは悟空の目の前で静止する。

 その姿を見た地獄のサイヤ人達は驚きの声を上げる。

 

 不敵な笑みを浮かべたベジータは、悟空の頭から爪先までじっくりと視線を送る。

 そして、悟空の目を見つめる。

 

 

『カカロット……、貴様とうとう超サイヤ人に…………』

 

 

 ベジータの言葉を聞いた悟空は、不敵の笑みを浮かべる。

 しかし、2人の会話はここで途切れることになる……。

 

 

『貴様が……なっ……何故だ!!!何故……、生きているのだ!!!!』

 

 

 ベジータが生きている事が信じられないのか、焦った様に声を上げるフリーザ。

 フリーザの声を聞いて、ベジータの中でフリーザへの怒りが膨れ上がる。

 忿怒の表情で右手を突き出しフリーザへ向ける。

 

 

『こんのぉーーーーー…………』

 

 

 突き出した右手にエネルギーの塊が形成され、叫びと共に攻撃が放たれようとした瞬間、それは起こった。

 今にも攻撃を繰り出そうとしたベジータが忽然と姿を消したのだ……。

 

 それとほぼ同じタイミングで、悟空とフリーザの背後に顕現していたポルンガの身体が光に包まれ、姿を消す。

 姿を消したポルンガのいた場所から、7つの球が天に向かって猛スピードで飛び上がる。

 

 

『ああっ……!!!……まっ……待てぇーーーーーーっ!!!!!』

 

 

 その光景を何も出来ず、唖然とした表情で見上げるフリーザ。

 そのフリーザに強気な笑みを浮かべる悟空。

 

 

『どうやら願いは叶えられなかったようだな……。

 オレもヒヤッとしたぞ……』

 

 

 呆然とした顔で悟空を見つめるフリーザ。

 

 

『…………何故ベジータが生きている??

 あいつは、確かにオレが殺したはずだ…………』

 

 

 そんなフリーザに悟空は種明かしする様に口を開く。

 

 

『地球のドラゴンボールで、お前らに殺された連中を生き返らせた。

 そして、ここのドラゴンボールで、この星にいる貴様とオレを除いた全ての連中を地球に移動させた』

 

 

 悟空の説明を聞いたフリーザの表情が、一気に忿怒によって歪む。

 

 

『そんなゴミ共の為に……、オレの不老不死へ願いを踏みにじったのか……貴様等は…………!!!』

 

 

 フリーザが怒気と共に発した怒声を無視する形で、悟空は静かに口を開く。 

 

 

『この時を待っていた……』

 

 

 苦々しい表情を浮かべたフリーザに、不敵な笑みを向ける悟空。

 そんな悟空の表情を見て、フリーザも表情を改め不敵な笑みを浮かべる。

 

 

『星が縮み始めた……。

 おそらく爆発まであと2分となかろう……。

 オレに殺されるのが先か、星の爆発が先か…………。

 どちらにしても、宇宙空間で生存できない貴様には死しかない……』

『かもな……』

 

 

 自身の言葉を聞いても、焦り一つ見せない悟空に、フリーザもようやく目の前のサイヤ人について本当の意味で理解した。

 

 

『死を覚悟してまで、どうやらこのフリーザと決着をつけたいらしいな……!』

 

 

 フリーザの言葉に肯定の意を返す様に、不敵な笑みを向ける悟空。

 そして、ゆっくりと地上へ降りていく。

 

 その光景を見て、フリーザの方も愉快そうに笑みを浮かべる。

 

 

『肉弾戦か……。

 そこまでとことん決めたいか…………、いいだろう』

 

 

 悟空同様、地上へ降り立つフリーザ。

 

 星が崩れ落ちる中見つめ合う両者。

 戦闘民族サイヤ人の伝説の戦士とフルパワーとなった宇宙の帝王の、最期の戦いが今始まろうとしていた。

 

 戦いはついに最終ステージへ突入する。

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