ドラゴンボール -地獄からの観戦者- 孫悟空VSバーダック編 3

■Side:ギネ

 

 

 超サイヤ人に変身したバーダックとカカロットの闘いは、変身する前よりも更に激しさを増した。

 互いが繰り出す攻撃の1つ1つが、あたしからしたら致命傷に思えるのに、そんな攻撃を2人共笑みを浮かべ繰り出しているのだ。

 本当にどうしようもない戦闘バカだと思うよ……、家の男共は……。

 

 あたしがそんな事を思いながら、2人闘いを観ていると、あたしの頭上から声が聞こえてきた。

 

 

「ギネーーーッ!!!」

 

 

 あたしは声がした方向に眼を向ける。

 

 

「え!? セリパ!?」

 

 

 あたしの視線の先には、こちらに手を振りながら近づいてくるセリパの姿があった。

 しかも、よくよく見るとセリパだけじゃなく、トーマ達やラディッツ、ナッパの姿があった。

 困惑しているあたしの前に、6人が降り立つ。

 

 

「あんた達、いったいどうしてここに!?」

 

 

 あたしが、驚きの声を上げると、セリパが笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「いやさ、さっきからすごい衝撃があたしらの集落まで響いててさ、それでどっかのバカが闘ってんだろうなって思ってさ……」

「ああ……。 だが、ここまでとんでもねぇ闘いが行われているとはな……」

 

 

 セリパの次に口を開いたトーマは、言葉は私達に向けたものだったが、視線は完全に別のところに向いていた。

 トーマの言葉で、あたしや他の5人もトーマと同じ方向に目を向ける。

 あたし達の視線の先では、バーダックとカカロットが激しい闘いを繰り広げていた。

 

 

「凄まじいな……」

 

 

 トテッポが2人の闘い振りに、思わず口を開く。

 

 

(まぁ、そう思うよね……。 なんせ、超サイヤ人同士の闘いなんだから……)

 

 

 トテッポの言葉に内心でそんな事をあたしが思っていると、パンブーキンから声がかけられる。

 

 

「なぁ、ギネ……。 あれって……、もしかして、片方はカカロットか……?」

「うん、そうだよ……」

「なっ、なんであいつが地獄にいるのさ!?」

 

 

 フリーザとの戦いを見ていたパンブーキンは、超サイヤ人になったカカロットを見た事があったからか、すぐに闘っている2人の内の1人がカカロットだと分かった様だ。

 パンブーキンの問いにあたしが素直に答えると、あたしの隣にいたセリパが、カカロットが地獄にいる事に驚きの声を上げる。

 だが、あたしが口を開く前にナッパが更なる疑問を口にする。

 

 

「んな事より、カカロットの野郎と闘ってる奴は誰だ……? あの姿……、あ、あいつも、ス、超サイヤ人……だろ……?」

「た、確かに……。 でも、いったい誰だ……? カカロット以外に超サイヤ人になれるサイヤ人なんていなかったはずだ……」

 

 

 唖然とした表情で、言葉を発したナッパに、同じ様な表情でトーマももう1人の戦士に注目する。

 そんな中で、1人の男が静かに口を開く……。

 

 

「親父だ……」

「な、何だと……!? んなわけねぇだろ!! バーダックは下級戦士だぞ!!!」

 

 

 ラディッツがポツリと呟いた言葉に、ナッパがあり得ないと言った表情を浮かべる。

 しかし、ラディッツはそんなナッパを否定するかの様に口を開く。

 

 

「それを言うなら、カカロットだって下級戦士ではないか……。

 だが、超サイヤ人になったカカロットと瓜二つの顔をしていて、あの、古いフリーザ軍の戦闘服……、間違いない!!

 そうだろう、オフクロよ?」

 

 

 ラディッツは真っ直ぐあたしに視線を向ける。

 ラディッツはあの超サイヤ人の正体がバーダックだと確信している様だった。

 あたしは内心で「流石あたし達の息子」と思いながら、笑みを浮かべ口を開く。

 

 

「うん、正解!! 今カカロットの相手をしているのは、バーダックだよ……!!」

 

 

 あたしの言葉に、周りがどよめきに包まれる。

 

 

「ええっーーーーーっ!?」

「嘘だろ!? あいつ、いつの間に超サイヤ人なんかになってやがったんだよ!?」

「バーダックが……、伝説の戦士に……」

 

 

 セリパやパンブーキン、そして、滅多に表情を変えないトテッポまでが驚いた表情を浮かべていた。

 そんな中、トーマが真剣な表情であたしに声をかける。

 

 

「ギネ、バーダックが超サイヤ人になれたのは、あいつが閻魔から受けた仕事とやらで地獄を空けている事と関係があるのか?」

 

 

 トーマの鋭い指摘に、あたしは一瞬ギクッ!と肩を揺らす。

 しかし、別に超サイヤ人の事は隠す程の事でもないので、素直に話す事にした。

 何より、あたしもバーダックがタイムパトロールとして、どんな事をしているのかよく知らないしね……。

 

 

「うん、詳しい事はあたしの口から……、というか多分バーダック本人も詳しい事は言えなのかもしれないけど、どうやらそうみたいだね……」

「あいつ一体どんな仕事やってんだよ……」

 

 

 あたしの言葉に、呆けた様な表情でパンブーキンが口を開く。

 

 

(いや、本当にね……)

 

 

 パンブーキンの言葉に、あたしは内心でそんな事を思いながら、苦笑いを浮かべる。

 

 

「それよりさ、あの超サイヤ人がバーダックとカカロットだって言うのは分かったけど、何であの2人が闘ってるのさ……?」

 

 

 次に口を開いたセリパは、バーダックが超サイヤ人に目覚めた事以上に、何故カカロットとバーダックが闘っているのかが気になる様だ……。

 その証拠に、こちらに目を向けちゃいるが、チラチラと2人の闘いを見ている。

 よっぽど気になるんだね……。

 

 

(確か……、バーダックとカカロットが闘う本当の理由って、他の人には言ったらダメだったよね……)

 

 

 あたしとバーダックは、カカロットが死んで間もない頃、バーダックの師匠であるトランクスから、カカロットがいずれ生き返る事を聞かされた。

 そして、生き返る理由が宇宙の命運を左右する戦いに参加する為だとも。

 その戦いで、カカロットはとても重要な役目を担う事になる……と、トランクスは言っていた。

 

 カカロットが生き返った時に、しっかり役目を果たす為には、どうしても強大な力が必要になる。

 その為には、地獄にいる間にカカロットの実力を伸ばす必要があるのだそうだ。

 トランクスの話では、カカロットはそもそも、ほっといても自分で修行して自分を高めるだろうと言っていた。

 

 だが、真にサイヤ人がその戦闘力を大きく飛躍させる事が出来るのは、強敵との戦いの中だけらしい。

 流石戦闘民族といった所なのだろうか……。

 とにかく、カカロットがこれまで以上の力をつけるには、強敵が必要だと言う事だ……。

 

 そして、その相手に選ばれたのがバーダックだった……。

 まぁ、バーダック自身はずっとカカロットと闘いたがってたから、闘う理由はなんだってよかったんだろうけどさ……。

 結局のところ、この闘いとは、カカロットを更なる強さに導くための闘いなんだよね……。

 

 まぁ、バーダックがそんな事を気にして闘っているかまでは、分からないけど……。

 でも、そんな事この連中には言えないしねぇ……。

 

 

「あー、いや、それがあたしにも分かんないんだよね……。

 今日の朝、難しそうな顔でバーダックが帰ってきたからさ、気になって後をつけたら、ここに来たんだよ。

 そしたら、いきなりカカロットが現れて2人で闘いだしたんだ……」

 

 

 闘っている理由が理由だけに、あたしは2人が闘っている理由を誤魔化す事にした。

 だが、あたしの言葉を聞いたトーマは何やら納得した表情を浮かべる。

 

 

「なるほどな……。 カカロットがここに来た理由までは分からねぇが、互いに超サイヤ人へ至ったサイヤ人だからな……。

 もしかしたら、闘いを始めたのに深い理由なんてねぇのかもな……」

「ああ……、単純にどっちが強えのかやってみたくなっただけかもな……」

 

 

 トーマとパンブーキンの言葉に、あたし以外の面子は納得した様な表情を浮かべる。

 確かにあの2人だったら、理由がなくても出会ったら、こうやって闘ったかもしれない……。

 そんな事を考えながら、あたしは視線を2人の方に向ける。

 

 あたし達の視線の先で、2人の伝説の戦士の闘いは更なる激しさを増していく。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「だだだだだっ!!!」

「おりゃりゃりゃりゃりゃっ!!!」

 

 

 黄金のオーラを撒き散らしながら、高速で拳と蹴りを繰り出す悟空とバーダック。

 2人が攻撃を繰り出す事に大地と大気に衝撃が走る。

 

 

「オラァ!!!」

 

 

 バーダックの強烈な右拳が悟空を襲う。

 しかし、それを躱した悟空はカウンターの形でバーダックに蹴りを叩き込む。

 

 

「だりゃあ!!!」

「ぐうぁ!!!」

 

 

 悟空の蹴りで勢いよく後方へ吹き飛ぶバーダック。

 そんなバーダックに悟空が左掌を向ける。

 

 

「はぁーーーっ!!!」

 

 

 掛け声と共に、悟空の左手からエネルギー弾が放たれ、猛スピードでバーダックへ迫る。

 吹き飛ばされていたバーダックは、空中でくるりと体勢を整えると迫って来るエネルギー弾を右手で一閃し弾き飛ばす。

 そして、勢いよく悟空に向かって飛び出す。

 

 悟空は向かって来た、バーダックを迎え撃つべく拳を構える。

 そして、間合いに入った瞬間、その拳を凄まじいスピードで繰り出す。

 しかし、悟空の拳が当たる直前に、バーダックは悟空の頭上へ一瞬で移動する。

 

 悟空の頭上へ移動したバーダックは悟空の頭にエルボーを叩き込むと、そのまま背後に回り込み強烈な蹴りを叩き込んで、悟空を吹き飛ばす。

 

 

「がはっ!!!」

 

 

 背後からの攻撃に思わず声を上げる悟空。

 吹き飛んだ悟空に追撃を喰らわせるべく、悟空を追いかけるバーダック。

 だが、バーダックが追いつくよりも早く、体勢を立て直した悟空は、バーダックの顔面に強烈な左を叩き込む。

 

 そして、そのまま右アッパーをバーダックに叩き込み、おまけとばかりに、強烈な回し蹴りをバーダックに喰らわせ、吹き飛ばす。

 

 

「ぐっ……」

 

 

 悟空の連続攻撃に、今度はバーダックが思わず声を上げる。

 だが、バーダックが痛みに身を任せる余裕はなかった。

 何故なら、バーダックの目の前には、悟空の拳が迫っていたからだ。

 

 

「ちっ!」

 

 

 バーダックはとっさに、左手で悟空の拳を受け止め、右拳を繰り出す。

 しかし、バーダックの右拳も同じく悟空の左手に受け止められる。

 

 

「だりゃぁ!!!」

「オラァ!!!」

 

 

 2人はほぼ同じタイミングで互いに向かって膝蹴りを繰り出す。

 互いに繰り出した膝蹴りがぶつかった瞬間、轟音と共に凄まじい衝撃が地獄の大気を大きく揺らす。

 互いに両手をホールドしながら、膝を付き合わせた両者の距離はもはや30cmを切っていた。

 

 そんな、距離で2人の視線が交差する。

 2人は互いの眼を真っ直ぐ睨みつける。

 だが、その様な時間は長く続かなかった。

 

 2人は同時にニヤリと好戦的な笑みが浮かべると、ほぼ同時に頭を引く。

 そして、勢いよくお互いの頭に頭突きを叩き込む。

 2人は揃って、痛みに顔を顰めるが、互いの表情を見て相手の額に己の額をくっつけた状態で口元に笑みを浮かべる。

 

 

「テメェ、何て石頭してやがんだ……」

「オメェこそ!! おー、痛ぇ……」

 

 

 こんな状況なのに、笑みを浮かべながら口を開く両者。

 流石に今の体勢は窮屈だったのか、2人は互いに距離をとり地面へ降り立つ。

 そして、改めて向かい合う両者。

 

 

「まさか、ここまでやるとは思ってながったぜ……」

「オメェこそ!! オラあの世に来て、相当修行したつもりだったんだがな……」

 

 

 悟空の言葉に、バーダックはフッ!と笑みを浮かべる。

 

 

「修行か……、オレもありがてぇ事に、鍛えてくれるヤツに恵まれたからな……。

 今のオレの強さがあるのは、そいつのおかげだ……」

「へー、オメェをここまで鍛え上げるなんて、オメェの師匠は大したヤツなんだなぁ!!」

 

 

 バーダックは言葉にした通り、今日こそトランクスに感謝した日はなかった。

 あの日、フリーザと戦う眼の前にいる男の姿を見た時、バーダックは全身を突き抜ける衝撃を受けた。

 眼の前の男は、サイヤ人の持つ可能性というものを、正しく体現した様な存在だった。

 

 伝説の超サイヤ人へ覚醒した事もそうだが、それ以上にサイヤ人が持つポテンシャルに甘んじず、更なる先を目指すべくその力を鍛え上げた。

 まぁ、この男の場合、鍛えないとそもそもポテンシャルを発揮出来なかった可能性はあるが、それは考えたところで仕方ない。

 実際、バーダックの眼の前にいる男は、何年も何年も己に厳しい修行を課し続け、己を高みへと押し上げた。

 

 その結晶が、どんな絶望的な状況でも、不可能を可能にする精神と限界を超えながらも更なる力を引き出す最強の戦士、孫悟空となった。

 そんな男と、バーダックは心底闘ってみたいと思った。

 だが、生憎と当時のバーダックの力量ではどうやったって、悟空とは勝負にならなかった。

 

 2人の間には、それだけ隔絶した実力差が存在したのだ……。

 そんなバーダックを鍛え上げたのが、ベジータの息子であり、タイムパトロールの先輩でもあるトランクスだった。

 トランクスの修行は正直キツかった……。

 

 言葉には出さなかったが、心が折れそうになった事は幾度もあった。

 だが、悟空と……カカロットと闘いたいという強い想いがバーダックを支え続けた。

 そして、約10年の歳月を経てようやく、バーダックは悟空に並ぶ力を手にする事が出来たのだ……。

 

 

「そういえば……」

「ん?」

 

 

 昔を振り返っていたバーダックは、ふと思い出した様に口を開く。

 その言葉に悟空は首を傾げる。

 

 

「フリーザの野郎を倒したサイヤ人とは、お前の事だろ……?」

 

 

 バーダックはあえて、他人事の様に悟空に問いかける。

 

 

「ああ……。 確かにオラが倒した! まぁ、トドメを指したのは他のヤツだけどな!!」

 

 

 バーダックの問いに悟空は素直に答える。

 

 

「そうか……。 なら、オレはテメェに礼を言わねぇといけねぇわけだな……」

 

 

 真っ直ぐ悟空を見て口を開いたバーダックに、悟空はゆっくり首を振って口を開く。

 

 

「礼なんかいらねぇよ。 あいつにはオラ自身も色々思うトコがあったからな……」

「かもしれねぇ……。 だが、お前がオレ達地獄にいるサイヤ人達の望みを(そして、オレの想いを)叶えたのも事実だ……。

 だから、礼を言っておく……。 ありがとな……」

 

 

 ぶっきら棒だが、確かな誠意が籠もったその言葉に、悟空の胸はアツくなる。

 そして、笑みを浮かべる。

 

 

「へへっ……、そう言ってもらえると、正直悪い気はしねぇな……!!

 けどよ、今のオメェだったら間違いなくフリーザは倒せると思うぜ!!」

「当然だ!! オレの目指す強さは更に先なんだからな……!!」

 

 

 そう言うと、もう話は終わりだ、と言う様にバーダックは再び構える。

 構えたバーダックを見て、悟空も楽しそうな笑みを浮かべ構えをとる。

 再び2人の間の空気が張り詰める。

 

 

「だあっ!!!」

「はあっ!!!」

 

 

 ほぼ同時に飛び出した両者は、互いに右拳を繰り出す。

 2人が繰り出した拳が、轟音を響かせ、凄まじ衝撃を撒き散らしながらぶつかる。

 しかし、2人は即座に拳を引くと、その場で超接近戦へ突入する。

 

 次々に繰り出される拳と蹴り、それを互いに捌き受け、躱し反撃する。

 超接近戦での打撃戦だと言うのに、2人は互いにまだ1発もクリーンヒットをもらっていなかった。

 しかし、その均衡が崩れる時がやって来た。

 

 

「だらぁ!!!」

 

 

 悟空の強烈な右が、バーダックの左頬を捉えたのだ。

 そして、僅かに体勢が崩れたバーダックに向かって、回し蹴り叩き込む。

 

 

「ぐっ!!」

 

 

 何とか耐えたバーダックは、すかさず左拳を繰り出す。

 しかし、それを頭を下げて躱した悟空がカウンターの要領で同じく左拳を繰り出す。

 それを見たバーダックは、とっさに右手で悟空の左手を跳ね上げる。

 

 しかしそれも束の間、悟空の右拳がバーダックを襲う。

 バーダックはとっさに後方へ飛び退く。

 そして、着地と同時に悟空へ向け猛スピードで飛び出す。

 

 バーダックを迎え撃つべく、構える悟空。

 すると、バーダックが悟空が立つ場所より1m程前の地面に向かってエネルギー弾を繰り出す。

 着弾したエネルギー弾のせいで、悟空の視界を砂埃が覆う。

 

 しかし、気でバーダックの位置を把握している悟空は、構わず間合いに入ったバーダックに向かって拳を繰り出す。

 だが、それを躱したバーダックはそのまま悟空の間合いに入り込み、ボディに強烈なボディブローを叩き込む。

 

 

「吹き飛べっ!!!」

「ぐはっ!!!」

 

 

 ボディブローを受けて悟空が、上空へ吹き飛ばされる。

 バーダックは追撃する為、悟空を追い舞空術で飛び出す。

 吹き飛ばされた悟空は、先程喰らったボディブローの威力が凄まじかったのか、腹を押さえながら上昇を続けていた。

 

 しかし、すぐにバーダックが自分を追って来ていることに気づいた悟空は、その場で動きを止め右掌をバーダックに向ける。

 

 

「はっ!!!」

 

 

 そして、悟空の右手から不可視の攻撃、気合砲が放たれる。

 

 

「がっ!!」 

 

 

 ドン!という音共にバーダックの全身を衝撃が襲い、身体を落下させていく。

 

 

「はっ!! はっ!!!」

 

 

 落下するバーダックに、続け様に追撃の気合砲を繰り出す悟空。

 

 

「ちっ!!!」

 

 

 しかし、今度はとっさにガードの体勢をとる事でこれ以上の落下を防いだバーダック。

 だが、安心している暇はなかった。

 ガードの上から悟空が強烈な蹴りを叩き込んだのだ。

 

 それにより、一気に地面に落下していくバーダック。

 悟空は、落下していくバーダックを見ながら両手を右腰だめに移動させる。

 

 

「かぁ、めぇ……」

 

 

 悟空の両手に眩い光と共にエネルギーの塊が形成されていく。

 落下していたバーダックは、その悟空の姿を捉える。

 

 

「あれは!?」

 

 

 バーダックはその構えを知っていた……。

 これまで何度も水晶を通して見て来た戦いの中で、幾度となく繰り出された、あの恐るべき必殺の技を……。

 

 

「ヤベェ!!!」

 

 

 これから悟空が繰り出す技を知っているバーダックは、流石に直撃は不味いと考え、即座に身体を制御し舞空術で地面に降り立つ。

 

 

「はぁ、めぇ……」

 

 

 地面に降り立ったバーダックの視線の先には、既に体内の気を集約させ眩いばかりのエネルギーの塊を顕現させた悟空の姿があった。

 

 

「間に合えっ!!!」

 

 

 バーダックは即座に強力なエネルギーの塊を右手に顕現させる。

 悟空のかめはめ波にライオットジャベリンを当て、相殺は無理までも威力を弱める算段だ。

 流石に気を込める時間に差があり過ぎた為、相殺は無理だと瞬時に判断したのだ。

 

 だが、その目論見はあっけなく崩される事となる。

 今にもかめはめ波を放とうとしていた悟空の身体が僅かにぶれる。

 

 

ーーーシュン!

 

 

 風を切り裂く様な音と共に、視線の先の悟空の姿が忽然と消えたのだ。

 

 

「なっ!?」

 

 

 目の前の光景に驚きの声を上げるバーダック。

 だが、驚いてる暇はなかった。

 突如背後に、強大な気を感知したからだ。

 

 しかし、もう遅い……。

 既にチャージを完了した悟空は、バーダックに振り向く暇さえ与えない。

 

 

「しまっ……」

「波ぁーーーーーっ!!!!!」

 

 

 ついに、繰り出された悟空のかめはめ波。

 両手から集約されたエネルギーが一気に解放され、強大な光の波は一瞬にしてバーダックを飲み込む。

 光が収束した時、地面にはかめはめ波が抉った後が一直線に伸びていた。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

「バーダックーーーーーッ!!!」

 

 

 ギネはかめはめ波に飲み込まれたバーダックを見て、思わず声を上げる。

 

 

「おいおい……、何だよ今の……?」

「分からん……、カカロットの奴、一瞬で親父の背後に現れた様に見えたが……、一体何をした……?」

 

 

 ナッパとラディッツは今の悟空の攻撃に、驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「にしても、大丈夫かよ? バーダックのやつ……」

「直撃だったな……」

 

 

 パンブーキンとトテッポがバーダックが沈んだ瓦礫の山に目を向ける。

 

 

「もしかして、本当に……」

 

 

 セリパが不安げな声を上げるが、それを否定する声が上がる。

 

 

「いや、どうやらまだ終わりじゃねぇみたいだぞ……」

「「えっ?」」

 

 

 否定の声を上げたのはトーマだった。

 トーマの言葉に驚きの声を上げるギネとセリパ、そして他の面子もトーマに視線を向ける。

 皆の視線を尻目に、トーマは口を開く。

 

 

「見ろよ……。 カカロットの奴……、あんなスゲェエネルギー波を喰らわせたってのに、バーダックが沈んだ瓦礫の山から一瞬たりとも視線を外さねぇ……。

 きっと、あいつは分かってんだ……。 バーダックがまだやられてねぇってな……」

 

 

 トーマの言葉で、全員が悟空に視線を向ける。

 視線の先の悟空は、未だ緊張感を維持した表情で青い瞳を瓦礫の山に……、その中にいるバーダックを見つめていた。

 

 

「にしても、さっきのアレはどうやって攻撃したんだ……? 全く見えなかったぞ……」

 

 

 皆の視線が悟空に集まる中、トーマが顎に手をやりながら不思議そうにポツリと呟く。

 トーマの言葉を拾ったギネが、「あっ!」と何かを思い出した様な声を上げる。

 皆の視線がギネに集まる。

 

 

「それならあたし分かるよ!!」

「えっ!? ギネそれ本当かい……?」

 

 

 ギネの言葉に、ギネの隣にいたセリパが驚きの声を上げる。

 だが、声に出していないだけで、この場にいる全員が似た様な表情を浮かべていた。

 

 

「オフクロ、本当に先程カカロットが何をやったかわかるのか!?」

「うん! 前にあの世一武道会って大会で、カカロットが使った技だから間違い無いよ!!」

 

 

 ラディッツの問いに、笑顔で応えるギネ。

 

 

「あの世一武道会ってーと、確か6年前くらいに大界王星ってトコで行われた、あの世一の達人を決める大会って言われたヤツだろ?」

「そう言えば、ギネとバーダックはその大会観てたんだっけ?」

 

 

 パンブーキンとセリパはギネが口にした「あの世一武道会」という名に、当時の記憶を呼び起こす。

 

 

「うん! それでね、あの世一武道会の決勝でカカロットはパイクーハンて奴と闘ったんだけど、そいつのサンダーフラッシュって技が物凄い強力でさ。

 しかも、その技には全然スキがなくて、発動するとカカロットでも躱す事も反撃することも出来なかったんだ」

 

 

 闘いの凄まじさを伝えたかったのか、大げさな身振り手振りを交えながら言葉を発するギネ。

 普段だったら、皆笑みを浮かべるところだが、発せれた言葉の衝撃が強すぎて驚きの表情を浮かべる。

 

 

「あのカカロットが、マジかよ……!?」

 

 

 皆の心情を代弁する様に驚愕の表情で、驚きの声を上げるパンブーキン。

 そこで、トーマが真剣な表情でギネに声をかける。

 

 

「なぁ、ギネ……。 1つ質問なんだが、その時のカカロットは超サイヤ人……、本気だったのか?」

「うん、それは間違いないと思うよ」

 

 

 ギネの言葉に、再び場は驚きに包まれる。

 彼らも、この戦いの前、初めて悟空が超サイヤ人に覚醒したフリーザ戦を見ているし、現在バーダックと繰り広げている激闘も見ている。

 だからこそ分かる、6年前とは言え、孫悟空が決して弱いはずがないと。

 

 それなのに、そんな悟空が躱す事も反撃する事も出来なかった技が存在するなど、彼らには俄に信じられなかった……。

 

 

「それで……? オフクロよ、カカロットはその技をどうやって攻略したんだ?

 そして、その時に使った何かが、先程の攻撃と関係しているのであろう……?」

 

 

 他のメンバーが驚きの表情を浮かべる中、ラディッツが真剣な表情でギネに発言を促す。

 

 

「カカロットはね、”瞬間移動”って技が使えるんだ」

「瞬間移動だと!?」

 

 

 ギネの言葉に、驚きの声を上げるラディッツ。

 だが、驚いているのはラディッツだけではない、瞬間移動の意味が分かる者は一様に驚いた表情を浮かべていた。

 そんな中で首を傾げ口を開くナッパ。

 

 

「何だよ……、瞬間移動って……?」

「瞬間移動とは、一瞬で異なる場所へ移動するという事だ……。 なるほど、どうりで……」

 

 

 ナッパの疑問に答えたラディッツは、納得した様な表情を浮かべギネを見つめる。

 ラディッツの思考を察したギネは、それを肯定する様に頷き、再び口を開く。

 

 

「あたしが、最初にカカロットが闘いで瞬間移動を使ったのを見たのが、さっき言ったあの世一武道会の決勝戦。

 パイクーハンとの激闘で、カカロットはもうほとんど動く事すら出来なくなっていた。

 そこで、パイクーハンがカカロットにトドメを刺す為に放ったのが……」

「さっき言ってた、サンダー何とかって技だね……?」

 

 

 ギネの言葉を引き継ぐ様に、セリパが口を開く。

 そして、それを肯定するに頷くギネ。

 

 

「さっきも言った様に、カカロットはパイクーハンの技に反応は出来ても、スキがなさ過ぎて躱す事も反撃する事も出来なかったんだ。

 だけど、カカロットは3回目にしてようやく、パイクーハンの技の動きを眼で捉える事が出来たんだって。

 そこであの子は、サンダーフラッシュが放たれた瞬間、パイクーハンの横に瞬間移動して、カウンターという形でかめはめ波を叩き込んで、パイクーハンを場外に落としたんだ」

「似ているな……、さっきバーダックに技を喰らわせた時と状況が……」

 

 

 ギネから聞いた内容に、トーマは先程の悟空の攻撃を思い浮かべる。

 

 

「それにしても、瞬間移動って……かなりエグい攻撃だね……」

「だよなぁ……。 あんなの予測しても躱せるモンじゃねぇしな……」

 

 

 トーマの言葉で、セリパとパンブーキンも瞬間移動の恐ろしさを改めて思い出す。

 

 

「そうだね……。 でも、きっとバーダックはカカロットが持てる力を全部使って闘って欲しいと思ってると思うんだ……」

「ま、闘いに卑怯だ何だってのは、結局言い訳に過ぎんからな……。

 瞬間移動がカカロットが使える技であるなら、それが有効であるなら使うのが当然だろう……」

 

 

 ギネはセリパやパンブーキンの言葉に同意しつつも、バーダックの心情を察する。

 そして、それに追随する形で、ラディッツも口を開く。

 2人が口にした事は、正にバーダックが考えている事と同じだった。

 

 

「確かに、バーダックなら負ける事よりも、力を隠された状態で勝った方が怒りそうだな……」

 

 

 2人の言葉に、バーダックとの付き合いが長いトーマはバーダックの人となりを思い出し、苦笑を浮かべる。

 その笑みに周りの者達も同意する様に、似た様な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

☆★☆

 

 

 

 瞬間移動かめはめ波をバーダックに叩き込んだ悟空は、未だ緊張を解いてはいなかった。

 視線の先には、今の攻撃で築かれた瓦礫の山があった。

 そして、悟空の鋭い感覚はバーダックが未だ健在なのを捉えていた。

 

 

(ちっ! 瞬間移動の事は知ってたが、実際に使われるとここまで厄介だとはな……。 だが……)

 

 

 瓦礫の中でバーダックは今の攻撃を振り返っていた。

 口では悪態をついているが、その顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

「コレだぜ、コレ……。 こんな闘いがオレはしたかったんだ!!!」

 

 

 好戦的な笑みを浮かべながら、言葉を発したバーダックは全身に気を巡らせる。

 それに伴い、自身の中に眠る力を解放させる……。

 まるで、バーダックのテンションに呼応する様に、全身から凄まじい気の嵐が放出される。

 

 その中には、これまでの黄金のオーラの中には混じっていない紫電の光が混じっていた。

 

 

「うーん、あいつから感じられる気はそこまで減ってねぇから、あまりダメージを受けているとは思えねぇんだけどな……」

 

 

 悟空は、未だに瓦礫の中から姿を現さないバーダックに首を傾げる。

 しかし、悟空の鋭い感覚はすぐに異変をキャッチする。

 

 

「ん? これは……、気が急激に高まってる……?」

 

 

 悟空は、視線の先の瓦礫に沈んでいるバーダックの気が膨らんでいくのを感じ取っていた。

 そして、次の瞬間轟音と共に目の前の瓦礫の山が一瞬にして、吹き飛んだ。

 まるで大規模な爆発の様な凄まじい衝撃に、悟空はとっさに両手で顔を守ろうとする。

 

 だが、悟空はそうする事が出来なかった……。

 何故なら……。

 

 両腕を中途半端な状態で止めてしまった悟空は、自分の腹部に眼を向ける。

 そこには、拳が深々と突き刺さっていた。

 

 

「がはっ……」

 

 

 肺から一気に空気を吐き出した悟空は、痛みで顔を歪めながらも、自分の腹に突き刺さっている拳から肘、肩と視線を動かす。

 そして、自分に拳を叩き込んだ男の姿をその眼に捉える。

 その男を見た瞬間、悟空が驚きの表情を浮かべる。

 

 

「オメェ……」

 

 

 その男は、先程悟空自身がかめはめ波で吹き飛ばした男だった……。

 だが、明らかに先程までと変わっていた……。

 外見が大きく変わったわけでは決してない……。

 

 だが、男から発せられる雰囲気……。

 全身から吹き荒れる凄まじい気の奔流……。

 そして、迸る紫電……。

 

 悟空は、その姿をよく知っていた……。

 

 

「超サイヤ人……2……」

 

 

 悟空がポツリと呟いた瞬間、男はニヤリと好戦的な笑みを浮かべる。

 

 

「続きと行こうぜ、クソガキ!!!」

 

 

 悟空の眼を真っ直ぐ見据えながらそう言葉を発したのは、超サイヤ人2へと変身したバーダックだった。

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