ドラゴンボール -地獄からの観戦者- フリーザ編 01

 ここは、地獄。

 生前罪を犯した者達が行き着く、最終地。

 ここでは生前に犯した罪を償う為に、さまざまな悪人や罪人達が存在している。

 

 そんな場所を1人の男が歩いていた。

 彼の名前はトーマ、かつてフリーザの命を受け仲間達と様々な星々を力で制圧したサイヤ人だ。

 

 彼は現在生前犯した罪を償うべく、地獄で多くの仲間達と罰を受けていた。

 彼自身としては、生前自分達が行ってきた事が罪とは思っちゃいないが、死者の魂への絶対の権力とあの世を司る力を持つ閻魔大王が下した判決故仕方なく罰を受けている。

 

 この地獄にはかつてフリーザに母星ごと滅ぼされた惑星ベジータの住民が少なからず存在している。

 サイヤ人は戦闘民族ゆえか、一部の例外や変わり者を除き生まれた時から凶暴で残忍かつ冷酷な性格な上、好戦的で本能的に戦闘そのものを好む者が多い。

 そんな民族だからか、戦闘力の強さや戦いの中に身を置くことを至上と考えているものが多く、弱者からの略奪や虐殺を行う事を厭わない者達も同様に多く存在した。

 

 そんなサイヤ人だが、今から25年ほど前までかつて自分達と手を組んでいた宇宙の帝王フリーザの命を受け様々な星を制圧していた。

 しかし、長年にわたり自分たちを奴隷のようにこき使うフリーザに対し疑念を持ち、サイヤ人による全宇宙の支配を目論むようになったベジータ王やサイヤ人達は次第にフリーザに反感を強め始めていった。

 

 どんどん強くなり団結していく事で力をつけ始めたサイヤ人達を危険視したフリーザは、サイヤ人の伝説に語られる「超サイヤ人」の出現を恐れた事もあり、ベジータ王子や一部の使えそうな者、他の惑星に送り込まれたごく一部の例外を除き、サイヤ人の抹殺を実行した。

 その内容はとても苛烈なもので、遠征に出ている力あるサイヤ人は幹部や部下達で任務後で力が低下している状態を見計らって確実にとどめを刺させる程の念の入りようだった。

 極め付けは惑星ベジータに何十何百のフリーザ軍兵士共々乗り込んで自軍の兵士達ごと、自らの手によってサイヤ人ごと消滅させてしまったのだ。

 

 いくらフリーザの命とはいえ、多くの星や罪もない人の命を奪った事に変わりはないし、自ら進んで残虐的な行為を行った者も少なからず存在した為、死後多くのサイヤ人は地獄行きとなった。

 中には天国行きの判決が出た者もいたが、仲間や大切な者と別れたくない為、自ら地獄へ行った者もいた。

 

 トーマもそんなフリーザのサイヤ人抹殺の手によって殺された1人だ。

 彼の場合は仲間達と遠征に出ている最中に、フリーザ軍の幹部ドドリアによって殺されてしまった。

 

 そんなこんなあった彼だが、目下の目的は自分たちを裏切ったフリーザへの復讐などではなく、同族の男を探し出す事だった。

 

 

 

■Side:トーマ

 

 

「セリパの野郎、なんでオレがあいつを探さなくちゃいけねぇんだ。オレより、ギネが探した方が見つかるんじゃねーか?」

 

 

 自身に面倒な役目を押し付け送り出した仲間に悪態を付きながら、その男をすぐ探し出せそうな1人の女を想像する。

 

 今探している男は下級戦士にしては破格の戦闘力と戦闘勘を持ち戦闘以外ほとんど興味を示す事はなかった、自身が記憶する限り表立って女に興味を示した事はないし、生まれてきた自身のガキの戦闘力を見て悪態を吐くほど冷酷な奴だ。

 そんな奴と正反対の存在と言っていい女、名前はギネ。

 

 サイヤ人のくせに戦闘への欲求がほぼなく、遠征にもほとんど出ずに惑星ベジータで働いていた。

 誰に対しても気さくに話しかけ、明るく人懐っこい性格な上、面倒見は良いし、なんだかんだで一本芯が通ったところがあるからか、戦闘力が低いヤツを見下す気質のサイヤ人でもあいつは見下されていなかったように思う。

 

 そんな性格が正反対同士の奴等がいつのまにか一緒にいる事が当たり前になり、気がついたら夫婦になってやがった。

 あの2人がどうやって出会ったのかオレは知らないし、興味もないがギネと出会った事であいつは間違いなく何かが変わったことだけは分かる。

 具体的に何が変わったのか?と聞かれると言葉にするのは難しいがな……。

 

 

「ったく、あの野郎本当にどこ行きやがった?毎度毎度サボりやがって……。こういう時にスカウターがないのは不便だぜ。まぁ、死んでる奴まで探せるかは疑問だがな」

 

 

 ギネと同族の男の事を考えながらしばらく歩いていると、いくつもの強大な針の上に鎮座した巨大な水晶が見えてきた。

 そして同時に探している男の後ろ姿を確認する事ができた。

 その男は巨大な水晶の前に仁王立ちして水晶を見上げていた。

 

 

「ようやく見つけたぞ、バーダック」

 

 

 探していた男に呼びかけてみるが、呼ばれた男は呼ばれた事に気がついていないのか、あるいは気づいているが無視しているのか分からないが、水晶を見上げたままだった。

 流石にカチンときたトーマはバーダックに近づき肩を掴み、もう一度声をかける。

 

 

「おい!聞いているのか、バーダック!」

 

 

 肩を掴まれ呼びかけられているにも関わらず、バーダックは水晶を見上げたままだった。

 流石に様子がおかしいと気づいたトーマは、自身もバーダックが見上げている水晶に目を向けると、絶句すると同時に何故バーダックが自身の呼びかけに応えないのかを理解した。

 

 

「ッ!?フッ、フリーザ……」

 

 

 自分でも無意識のうちにその存在の名前を口に出していた。

 そこには文字通り自身達を地獄に叩き落とした全サイヤ人の仇にして最悪の存在が映し出されていた。

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